総督と呼ばれた男(上)

集英社文庫

佐々木譲

2000年8月23日

集英社

628円(税込)

小説・エッセイ

大正の頃、木戸辰也は日本人娼婦を母にシンガポールの日本人街で育った。伯父の孝作にひきとられて、マレーの鉄鉱山で働き始めるが、労働争議に巻きこまれて孝作が殺される。辰也はただちに報復して、矯正院に送りこまれる。出所後シンガポールに戻り、辰也は暗黒街で頭覚を現していく。しかし、南国をも戦争の翳が覆い始めた。流転の人生を綴る波瀾の大河冒険小説。

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-- 2019年12月15日

佐々木譲「総督と呼ばれた男」

物語は、1923年シンガポールから始まります。からゆきさん(日本人娼婦)の子どもとして生まれた木戸辰也は、唯一の肉親である母親を亡くし、見知らぬ日本人の元で育てられています。 そこに、辰也の叔父という人物が彼を引き取りにやってきます。叔父は貧乏でしたが、辰也はこれまで住んでいた日本人街にいい印象を持っていなかったので、叔父が迎えにきてくれたことを嬉しく思いました。 彼らは不運やトラブルに見舞われ職を転々とすることになりますが、最終的にマレーの鉄鉱山に辿り着きます。しかしそこでもトラブルに見舞われ、叔父が殺されてしまいます。辰也はその復讐のために犯した殺人によって逮捕され、矯正院に送られてしまいます。 矯正院を出た辰也は、身一つで生活を始めます。それから職業的犯罪者として頭角を現すようになり、次第に日本人街に大きな影響を持つ人物として知られていくようになりました。しかい一方で戦争の陰がシンガポールにも忍び寄ってきて…。 というような話です。 本作は、とある事情から読むことになった作品です。もしこういう機会がなければ僕が読むことはなかった種類の作品ですけど、でも本作は予想以上に面白かったです。 まず一番驚いたのは、その文章の読みやすさですね。とにかく驚くぐらい文章が読みやすくて、スイスイ読んでしまいました。僕は戦争とか外国が背景になっている小説は結構読むのが苦手なんですけど、本作は全然そんなことはありませんでした。くせのないさらっとした文章で最後まで読めるので、誰によっても読みやすい作品なんじゃないかな、と思います。とにかく、これだけ読みやすい文章を書けるというのはなかなか驚異的だな、と僕は思いました。 ストーリーも、基本的には僕の興味の湧かない種類のジャンル(戦争とか裏社会とか暴力とかそういう系)なんですけど、でも本作はなかなか面白かったなと思います。まず木戸辰也という人間がなかなか魅力的ですね。普通こういう話は、暴力や裏切りなんかによってのし上がっていく話が多いと思うけど、本作では辰也は基本的には誠実な人間です。もちろん強盗もするし殺人もするんだけど、でも自分の身内にはきちんとするし、身内以外にもきちんとした対応をする男です。まあそんな男がここまでのしあがっていけるのか、という疑問は確かにあるけど、まあそれはいいでしょう。 さらに、その辰也の周囲にいる人間もなかなか魅力的に描かれているわけですね。敵も味方もなかなか味のあるキャラクターばかりで、ストーリーの展開のさせ方と登場人物の造型がかなりちゃんとしていると思いました。 本作は、基本的な構成がちゃんとしているので、サイドストーリー的なものをいくつか生み出せるんじゃないかな、と思いました。僕が読みたいなと思ったのは、後々出てくるクロフォードという刑事視点の物語ですね。クロフォードというのは、木戸辰也を重罪で謙虚することを唯一と言ってもいい目標にしている男で、常に木戸辰也に付きまとっています。天才的な直感でいくつかの事件に関連を見出したりと、なかなかのキレ者でもあります。そんな二人は、ルパンと銭形警部みたいなんですよね。クロフォードの視点から木戸辰也を描いたストーリーがあれば面白いかもしれないな、と思いました。 というわけで内容に関してはかなりいいと思うんですけど、残念なのは表紙ですね。何かイケてないんですよね。これさえ何とかなれば売れそうな気はするんですけど。 もし売るとしたら、『男版「嫌われ松子の一生」』なんてフレーズは面白いかもしれないな、と思ったりしました。 そんなわけで、かなり長い作品ですけど、とにかく文章が読みやすいのでスイスイ読めると思います。ストーリーもちゃんとしているし登場人物も魅力的なのでかなり楽しめると思います。読んでみてください。

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みんなのレビュー (1)

Readeeユーザー

starstarstarstarstar 5.0 2019年03月07日

(無題)

大正の頃、木戸辰也は日本人娼婦を母にシンガポールの日本人街で育った。伯父の孝作にひきとられて、マレーの鉄鉱山で働き始めるが、労働争議に巻きこまれて孝作が殺される。辰也はただちに報復して、矯正院に送りこまれる。出所後シンガポールに戻り、辰也は暗黒街で頭覚を現していく。しかし、南国をも戦争の翳が覆い始めた。流転の人生を綴る波瀾の大河冒険小説。

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