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泣かない女
短篇セレクションミステリー篇
集英社文庫
小池真理子
2002年9月30日
集英社
502円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
女を泣かせたい。すがるようにして泣く女を見てみたい。男は、心の奥に歪んだ欲望を秘めていた。恋人の裏切りを契機に、男は女を泣かせ、懲らしめるための周到な計画をたてる。表題作「泣かない女」の他、日本推理作家協会賞受賞作の「妻の女友達」を含む全4篇。普通の人々の日常とその心の隙間に忍び寄る狂気を描いて、ミステリーの醍醐味あふれる傑作短篇集。
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「妻の女友達」 平凡な公務員である主人公の幸せは、毎日を妻や娘と穏やかに過ごすこと。しかし、ある日突然妻の旧友が現れ、穏やかな日々は壊されていく。 穏やかなひっ美を取り戻したい主人公は妻の女友達を殺害しようと計画を練る…。 後の作品にも言えることだが、殺害の動機としては弱すぎるし、安易に自分が犯人と疑われないであろうという根拠が乏しいため、若干犯人の間が抜けているように映るのが残念。 ただ、小池さんはこう言った点に主眼をおいていないのだろう。それよりも、日常では気づかなかった悪意や、不気味さ、思い込みの滑稽さを掘り下げたい作家だと思うので、十分に楽しめる。 「泣かない女」 女を泣かしたい。という偏った性癖を持つ男の話。これも、学歴、家柄も申し分なく、優秀な設定のはずなのに、恋人に対する復讐が計画なしの作り話で、部屋に閉じ込めるだけという点が滑稽に見えた。 ただ、自分が作った作り話通りに女の子の死体があり、自分も閉じ込められ、焼死することによって従兄弟の罪まで被ってしまうというラストは、わかっていてもぞくり、とした。 「悪者は誰?」 夫を殺そうと思う動機が弱すぎる。後に翻意したとはいえ、だ。また、翻意するきっかけもカナリアを殺したくないから、というのは説得力がない。 ただ、夫が最後まで善人であり、妻を純粋に愛する気持ちであるという皮肉は面白かった。妻は自分の策に溺れ、夫の優しさによって(恐らく)死亡し、主犯の愛人の証拠まで残されてしまう。 「鍵老人」 鍵をなくしがちな老人という発想からここまで話を広げるのはすごいとおもった。充分におもしろかった。
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(無題)
短編だけれどどれも読後はオチがあり、うなるような感じが味わえる。『鍵老人』はタイトルからどんな内容かと思ったらドキドキちながら最後はなんだかホッとするというか不思議な感覚になった。あまり長いミステリーよりもこのくらいの短編が今しっくりくる。再読しても楽しめそう。
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