文明の衝突 上
集英社文庫(海外)
サミュエル・ハンチントン / 鈴木 主税
2017年8月22日
集英社
1,034円(税込)
人文・思想・社会 / 文庫
世界はどこへと向かうのか?各地で多発する民族紛争と文明間の軋轢の本質とは何か?著者は世界を、西欧・中国・日本・イスラム・ヒンドゥー・スラブ・ラテンアメリカ・アフリカの八つの文明に分け、冷戦終結後の様々な紛争をこれら異文明間の衝突ととらえた。各界に大きな衝撃を与え、侃々諤々の大議論を呼んだハンチントン仮説のインパクトは、21世紀の今も全く色褪せることがない。
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冷戦後の世界観に1つの解を与える本
1998年に書かれているが、ウクライナ戦争、スーダン分裂、スウェーデンのNATO加盟などを予言しており、先見の明が伺える本。世界を西欧文明、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明、イスラム文明、中国文明、東方正教会文明、ヒンドゥー文明、日本文明の8つに分割して考えている。そして、人間の最も重要な特徴は、体格や肌の色でなく、価値観、信仰、社会制度、社会構造で、最も重要な要素は宗教とした。また文明は人を文化的に分類する最上位の範疇として、明確な境界はなく、再定義で移ることも可能とする。ただしトルコやメキシコの例を挙げて、再定義には熱血的なエリート、黙認する大衆、移ってくる文明側の受容が必要としている。17世紀以降、西欧文明では似たような政治制度を持つ国家同士で争い続けて、その結果近代化に結実して、民主主義という制度が西欧文明のひとつの特徴となった。他文明は軍事力を増すために、近代化を企図し、西欧文明の要素を取り込もうとしたが、近代化は西欧文明の要素を受容しなくても出来ると気付いたことで、近代化しながら西欧文明の要素、例えば自由民主主義は受け入れない形が生まれたとする。
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