
走れメロス改版
新潮文庫
太宰治
2005年2月28日
新潮社
440円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
人間の信頼と友情の美しさを、簡潔な力強い文体で表現した『走れメロス』など、安定した実生活のもとで多彩な芸術的開花を示した中期の代表的短編集。「富士には、月見草がよく似合う」とある一節によって有名な『富岳百景』、著者が得意とした女性の独白体の形式による傑作『女生徒』、10年間の東京生活を回顧した『東京八景』ほか、『駈込み訴え』『ダス・ゲマイネ』など全9編。
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後ろの方の話では、太宰の人生が伺えて実に面白かった。 兄上たちとのいざこざや、太宰の失態、絶望、立ち直り。 彼自身の人生の価値観、歩み方が文から読み取れたのも、 この本を読んで良かったところである。 また、一度読んだ走れメロスも、二度目を読んでも飽きず面白く、その文章力に驚かされた。 彼の時代の金銭感覚も面白い。 まだ円の下の銭が存在する時代。 10月に消費税が増加するのを案ずる身からすると、 昔の家賃が数十円なんて、夢のような話だ。 しかし、彼らにとっては、値段こそ違えど、 今の私たちの価値と同じ値打ちなのである。 それからもう一つ。 私は太宰治という人間を尊敬する。 自分の過ち、失敗、その悪事をしっかり自分で把握して、 受け止め、反省し、理解し、またそれが絶望へ向かうこともあるが、それでも立ち直る。素晴らしい! 私には無理だ。 きっと、彼よりも自殺を繰り返すだろう。 それから、私は彼が次々と執筆し、このような数々の名作、 傑作を生み出せることを、本当に心から尊敬する! 執筆の苦労、難しさを、少しは知っているつもりだから、 余計に太宰の凄さが分かるのだ!
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