
影武者徳川家康 下
新潮文庫 りー2-7 新潮文庫
隆 慶一郎
2008年11月30日
新潮社
990円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
いまや二郎三郎は、秀忠を自在に操る家康なみの智将であった。彼の壮大な夢は、江戸・大坂の和平を実現し、独立王国=駿府の城を中心に自由な「公界」を築くことだった。キリシタン勢力を結集した倒幕の叛乱を未然に防ぎ束の間の平安を得るが、秀忠の謀略から遂に大坂の陣の火の手が上がる。自由平和な世を願い、15年間を家康として颯爽と生き抜いた影武者の苦闘を描く渾身の時代長編。
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人間洞察の鋭さがここまで小説を面白いものにし、感動を呼ぶものなのかを改めて思い知らさせれた一書だった。本書には、影武者・二郎三郎を中心にその宿敵・二代将軍秀忠を始め多くの人間群が登場する。智謀の人、愚鈍な人、武闘の人、スケールの大きな人、様々な個性が時代の要請に応えるかのように登場して、心の襞の隅々まで描き出される。悪役・秀忠と側近柳生宗矩を除いて皆魅力的な人物だ。いや、彼ら二人も反面教師と見れば、中々面白い人物像である。ともあれ、登場人物1人ひとりがその人だけで面白い小説が出来上がるほどに丹念に描き込まれているのだ。 本作の特徴として、豊富な歴史資料の引用があげられる。それは本作執筆に際して著者の事前準備が周到であるとも言えるが、一方で作品に独特な効果を与えている。それは歴史小説でありながら、歴史書を読んでいるような印象を与え、奇想天外な設定にリアリティを与えている効果である。また、近世の事柄について何と無く思い込んでいた認識の源が史料を示される事で明らかになり、改めて頷くことの多い読み物である。 さて、関ヶ原の戦いが終わり、時代は平和へと大きく舵をきった。しかしながら、何の努力も無しに平和が維持されるわけも無く、目に見えないところで血みどろの戦いが続いていた。所謂諜報戦であり秀忠との心理戦である。その戦いを担うのは、忍者である。二郎三郎とともに本書のもう1人の主人公、甲斐の六郎の波乱万丈の人生が面白い。六郎は家康を暗殺した張本人である。六郎に暗殺を命じたのは、石田三成の猛将・島左近。主君とともに落ち延びて命を長らえた六郎であったが、影武者・二郎三郎の人物を見抜いた左近に二郎三郎の警護を命じられる。その後、風魔一族を味方に引き入れるなど、二郎三郎の影働きをするうちに忍びの技、頭脳、胆力が鍛えられ忍び集団の頭目としての貫禄を示すようになって行く。 骨格がしっかりした重厚な小説であった。それだけに面白く読み終えることができたが、全編を通して一種の諦観のようなものが漂っていたのは何なのだろうか。それが本作をエンタテインメント小説以上にしている原因なのかもしれない。
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taboke
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