ラッシュライフ
新潮文庫 新潮文庫
伊坂 幸太郎
2005年5月31日
新潮社
825円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場ー。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
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人生なんてみんな初心者
掛け違えたボタンのごとく物語が始まり、最後にはすべてもとの場所に収まる、見事な構成で展開されるミステリちっくなエンタテインメント小説。泥棒、殺人を計画する不倫妻、父が自殺した道に迷える青年、リストラされた男と犬、そして金持ち画商と画家の5つのラッシュライフが織り成す、皮肉な人間賛歌。 2002年に発刊された本作は、会話の軽妙さ、小粋さがまだまだ少ない。しかし、やはり伊坂らしい会話の妙が楽しめる作品である。 チルドレンへの布石であるかのような銀行強盗も出現しており、仙台を舞台とし、作者の各作品でひとつの世界として創造しているかのようである。もう、年表とかつくれるんじじゃね??みたいな。この遊び心は、固定ファンにはうれしいものである。 エッシャー、そしてその騙し絵が象徴のように幾度も出てくる。いくら階段を上って下りてもまたもとのところに戻ってくるあの絵である。そう、結局人生は、進んでいるようで、おんなじことの繰り返しなのだ。たとえ、突如として人生の転換が訪れようとも、なるようになるのである。悩んだって始まらない、今日という日を明日のために生きていこう、というメッセージをさりげなく伝えてくれる作品ではなかろうか。 そう、人生なんてみんな初心者。イッツオールライト、問題ないさっ。
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(無題)
新しい客を探す泥棒、父に自殺された青年、交換殺人を計画するカウンセラー、リストラされて犬を拾った男、大手画商オーナー。全く関係のない物語たちが最終章で一行ごとに目まぐるしいスピードで繋がっていく。エッシャーの絵をなぞるような話。だまし絵のように堂々巡りであり、終わりがなく、結局は初めに戻る。それなのにハッピーエンドだから面白い。
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