恋の聖地

そこは、最後の恋に出会う場所。

新潮文庫

原田マハ / 大沼紀子

2013年6月30日

新潮社

572円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

大人なら誰でも、愛に傷つくことがある。望みのない恋に溺れたり、かけがえのない相手を見失ったり。けれど、そこに行けばきっと出会えるはず。まだ見ぬ大切な人に。忘れかけていた、いつかの自分に。だから、日常を離れて旅立とう。小さな奇跡をさがす、祈りにも似た想いを抱えてー。全国各地にある「恋人の聖地」を舞台に、七人の作家たちが紡ぎ出す、七色の恋愛アンソロジー。

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3.4 2018年02月09日

「愛国」から「幸福」への切符がブームとなったのは、ピンクレディーやキャンディーズ、西城秀樹や沢田研二が出演するザ・ベストテンを毎週楽しみに見ていた昭和50年台の事である。当時、愛国やら幸福やらと随分都合のいい駅名があったもんだと感心したものだった。北海道の地名はアイヌ語由来のものが多いが、元々幸福駅周辺をアイヌは「サツナイ」と呼んでいた。和人はこの「サツナイ」に「幸震」という漢字を充てた。その後、この一帯は福井県からの入植者が多いことから、福井の一字を充当して「幸福」と名付けたのだった。しかし、1987年(昭和62年)に広尾線は廃線となった。観光業の他にこれといった産業もない北海道がこれほどの観光資源をおいそれと手放すはずもなく、幸福駅は観光ポイントとして再出発したのだった。 本書は全国各地に100ヶ所以上ある「恋人の聖地」を実際に訪れた、7人の作家たちが紡ぎ出す恋愛アンソロジーである。トップバッターの原田マハが選んだ聖地は1962年の幸福駅であった。昭和37年といえば日本もまだまだ貧しい時代であった。帯広近郊の貧しい農家に20歳で嫁いだ母の一生は薄幸な人生だった。私と母とそして年老いた祖父母を置いて都会に出稼ぎに行ったまま、仕送りはおろか行方も知れない父。貧しい中にポツンと取り残されたように生きる母にとって、ある日都会から訪れた画家への思慕の念と性の衝動は私からみても、やりきれないものだった。 この他に窪美澄の「たゆたう ひかり」がとても良かったので紹介しておきたい。真奈美は34歳独身、東京の出版社で20代後半から30代の働く女性を読者にする雑誌編集に携わる。同誌編集長と不倫、堕胎経験あり。この真奈美からは「今の時代の気分」がしっかりと伝わってくる。例えば、女性の最大の関心事、妊娠について「20代で何の心配もなく産める働く女なんていないだろうに」とか、「長野市の高校に行ったときも、東京の大学に行ったときも、同級生たちをぐいぐい追い越した気でいた。けれど、今は周回遅れだ。東京でいい気になって仕事だけしていたら、気がつかないうちに、どこかで追い越されたのだ」とキャリアウーマンの悲哀も垣間見られる。そんな殺伐とした心を潤わせたのが、同級生・瀧本と聖地・八島ヶ原であった。

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