きらきらひかる
新潮文庫 えー10-1 新潮文庫
江國 香織
1994年6月30日
新潮社
572円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
私たちは十日前に結婚した。しかし、私たちの結婚について説明するのは、おそろしくやっかいであるー。笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。そんな二人は全てを許し合って結婚した、筈だったのだが…。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上る誠実、友情、そして恋愛とは?傷つき傷つけられながらも、愛することを止められない全ての人々に贈る、純度100%の恋愛小説。
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(無題)
p.188 たまらなかったのは睦月と寝られないことじゃなく、平然とこんなにやさしくできる睦月。水を抱く気持ちっていうのはセックスのない淋しさじゃなく、それをお互いにコンプレックスにして気を使いあっていることの窮屈。 ゲイの睦月と、躁鬱の気がありアル中気味の笑子(しょうこ)が新婚生活をおくる。睦月には紺という恋人がいて、作中で笑子とも仲良くなるし、3人は今のままの形でちゃんと幸せなのだが、世間(=両親や友人)はそれを許さない。 2人の静かな生活と、家の安心感、静けさが心地よかった。そして、このままでいたいのに、周りからの圧力を誰よりも気にしているのは自分たち自身で、その事実にそれぞれ違うかたちで押しつぶされそうになってゆく2人の切実さが痛いほど伝わってきて苦しかった。 「生きてるだけで、愛」を少し思い出した。 人がいればいるだけいろんな関係性のかたちがあって、誰だってどこかしらは不安定で、そこが人間のいいところで愛しいところだよね。
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たきひろ
(無題)
映画を見たのでその流れで原作を読む。主役以外の人物の性格が微妙に違うが大筋同じ内容。映画のところどころに原作のセリフをまぶしているが展開はまったく違う。原作のほうが主役二人の心理が細かく伝わって面白い。ただ、男性陣の出来すぎた性格が感情移入できず、逆に主役女性の感情の爆発や考え方が退避して現実味を帯びている。作られた世界の中の、たったひとつの現実的存在。最後は結末といえるような展開があるわけではないが、これで何か決着がつくようであれば面白くなかったかもしれない。さらっと簡単に読めて深く考えることもなく、さっぱりとした雰囲気がよかった。
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