みんなの評価(58)
starstarstarstar
読みたい
60
未読
67
読書中
5
既読
790
未指定
418
登録しました。
close
ログイン
Readeeのメインアカウントで
ログインしてください
Readeeへの新規登録は
アプリからお願いします
- Webからの新規登録はできません。
- Facebook、Twitterでのログイ
ンは準備中で、現在ご利用できませ
ん。
シェア
X
LINE
リンク
楽天ブックスサイト
楽天ブックスアプリ
© Rakuten Group, Inc.
キーワードは1文字以上で検索してください
Readeeユーザー
(無題)
お肌に良いのはビタミンC。ではビタミンFは。ビタミンFは心に効くのである。そんな効能通りのお話しを集めたのが本書である。短編7篇それぞれでビタミン剤の効き目が表れてくるのが、終わりから20行前あたりから。効き目は確実なことが分かっているので、それ以前にどんなにやきもきさせられても、安心していられるところが良い。 各編とも主人公は働き盛りのサラリーマン。年齢は40前のおじさん世代。家庭は専業主婦の妻と二人の子供。上の子が中学二年生とむづかしい年頃。今から14年前に刊行された本であることを考慮しても、この家族モデルは古すぎるような気がする。妻が専業主婦である事と、結婚年齢が早すぎるのではないか。ま、いずれにしても、本作は家族の様々な危うさを切り取り描き出している。 どの物語もサラリと読み進められるのに、読後にはほのかな温かみを残してくれる。一見、平凡で当たり前に見える家庭の幸福はいったん崩れてしまうと、それを取り戻す事は容易ではない。それと同様に、繰り返される変化の乏しい家庭生活の中で、いったん退屈なつまらなさを感じてしまうとそこに新鮮な価値を見出すことが難しくなる。 これが家族とともに本書のもう一つのテーマである。安定からもたらされる日常の倦怠という中年期の精神的混迷である。また、この時期は自分が歩んできた人生にはどのような意味があったのか、この人生の進路の選択は誤りではなかったのかという問いに悩まされやすい時期でもある。本書には中年男性のそんな切なさと哀れさが漂う。 いわば中年メランコリーとも呼ぶべき気分なのかも知れない。僕にもそんな時期があったのかと胸に手を当てても、すっかり忘れて思い当たる節がない。むしろその後に訪れた初老期うつの方が心に残っている。熟年を通り越して老年期を迎えた我が身としては、最後のお話し「母帰る」に登場する父に一番の親近感を覚えるが、まだそこまで枯れてないなー、との感もある。
全部を表示いいね1件