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アカペラ
新潮文庫 新潮文庫
山本文緒
2011年7月28日
新潮社
649円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
身勝手な両親を尻目に、前向きに育った中学三年生のタマコ。だが、大好きな祖父が老人ホームに入れられそうになり、彼女は祖父との“駆け落ち”を決意する。一方、タマコを心配する若い担任教師は、二人に振り回されてー。奇妙で優しい表題作のほか、ダメな男の二十年ぶりの帰郷を描く「ソリチュード」、独身の中年姉弟の絆を見つめた「ネロリ」を収録。温かくて切ない傑作小説集。
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(無題)
いくら小説とはいえ、15歳の少女が72歳の老人に恋をするのは、いささか無理がある、これが本編を読んだ大方の感想ではなかろうか。仮にこれが逆のケースだと、大いにありうる。74歳のゲーテが17歳の少女に恋をして、優れた文芸作品を残したのは有名な話だ。第1話アカペラはゴンタマこと権藤たまこと大好きなおじいちゃんとの駆け落ち騒動を軸に物語が進行する。ちびまる子ちゃんとともぞうじいちゃんのホノボノストリートかと読み進めるうちに、思わぬ方向に進展してその落差にびっくり仰天。 第2話ソリチュードは主人公・春一の孤独を扱ったお話し。春一の孤独はなにによってもたらされたかというと、春一が何でもかんでも背負い込もうとするから、重くなりすぎて居場所が無くなってしまうのが原因だ。初めは従姉妹の美緒との恋愛であった。人生の筋道もまだ見当がつかないうちだったので、春一には大反対された意味もよく分かってなかった。父親との軋轢そして美緒の関係を清算できずに家出してしまったのが、女の庇護のもとで生きるキッカケとなった。 祖父と孫娘、従兄弟同士と許されない愛を描いてきた本作が最後に取り上げるのは異母兄弟の愛である。もうすぐ50歳になる姉・志保子と39歳の弟・日出男の二人。両親は離婚し、一緒に住んでいた母は癌で亡くなった。弟は病気で無職。姉が生活を支え、細々と暮らす姉弟。姉は小さい時から弟のことだけを考えて生きてきた。39歳の日出男に母性本能を感じて愛情を注ぐ19歳のココアちゃんは不思議な存在だ。姉と一緒に暮らす日出男の家には入り浸りだし、単なる恋人以上の何かがありそう。 この三編、共通するのは世間から見ればアブノーマルな愛を描いている。しかし、そこには彼あるいは彼女の止むに止まれぬ思いがあり、読者はゾッとするおぞましさではなく、純粋な愛に心を洗われる思いさえする。何よりも3編ともに読者の気持ちを救うどんでん返しが用意されているのは、読者サービスか。
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ドクショ
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