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堪忍箱
新潮文庫 新潮文庫
宮部 みゆき
2001年11月30日
新潮社
693円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
蓋を開けたら最後、この近江屋に災いが降りかかる…。決して中を見てはいけないというその黒い文箱には、喪の花・木蓮の細工が施してあったー。物言わぬ箱が、しだいに人々の心をざわめかせ、呑み込んでいく表題作。なさぬ仲の親と子が互いに秘密を抱えながらも、寄り添い、いたわり合う「お墓の下まで」。名もなき人たちの日常にひそむ一瞬の闇。人生の苦さが沁みる時代小説八篇。
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(無題)
宮部みゆきの直近の読了作品は「ソロモンの偽証」でなかったかと思う。三巻構成の大著であった。宮部の良さは展開がゆっくりと、しかも大胆な発展をしていく長編にこそよく現感じた事を記憶している。 本作はそんな宮部の短編集である。長編はスケールの大きな構成力が問われるのに対し、短編はいわば詩的な感覚を要する。本作は江戸でその日暮らしを強いられる人々の人間模様を描いたものである。これらの短篇の多くは、奉公人として働かなければならない、まだ少年少女の視点から見た人情や妬みや恨みの気持ちを抱いて生きる人間の姿である。 キレる若者などというが、これは昔は無かった言い回しである。では、キレると言うが、何が切れるのであるか。堪忍袋の緒が切れたのである。我慢に我慢を重ね、遂に限度を超えて爆発する様をこのように言ってきた。ここから派生して我慢をせずに直ぐに暴走するのをキレると言うようになったのだ。だから「堪忍袋」は分かるが「堪忍箱」とはなんだろう。こんな素朴な疑問とともに読み始めた本書であった。 菓子問屋近江屋に創業以来代々当主に伝えられた漆塗の黒い文箱があった。その文箱とともにある言い伝えは、決して中を見てはいけない、蓋を開けたら最後、この近江屋に災いが降りかかるというものだった。見たいけど見てはいけない、じっと我慢するので、我慢箱である。見てはいけない、と言われれば余計見たくなるのが人情である。ましてや、好奇心旺盛な少女である。我慢する方が不自然である。ところが、お駒を襲った過酷な運命は、天真爛漫な少女の心に変化をもたらすのだった。「堪忍箱」に封印されているのが人のくやしさや嫉妬心、怨念である事が蓋を開けなくても解ってくるのである。だれの人生にだって開けちゃいけない「箱」があることを次第に悟っていく少女の物語である。
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ケムケム
最高!宮部ワールド!
八つの短編が納められている本。 期待通りの素晴らしさだった。江戸時代の設定だが、人間の醜さ、不可解さ、弱さなど現代に生きている私たちに通じる話ばかりだ。 読んで心のデトックスができた。セラピー効果抜群!
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