ツナグ

新潮文庫 新潮文庫

辻村 深月

2012年9月30日

新潮社

781円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員…ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。

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-- 2019年12月18日

辻村深月「ツナグ」

本書は5編の短編が収録された連作短編集です。 まず全体的な設定から。 本書には、使者(ツナグ)という存在が出てくる。使者は、死者と生者を引き合わせる役目を持つ者だ。生者は一度誰か死者に会ってしまうと二度と死者には会えないし、死者の側も同じく、一度生者に会ってしまうと二度と生者には会えない。その仲介をするのが、使者だ。 使者は都市伝説のように、噂レベルの情報として存在している。その噂を信じ、必死になって情報を集めれば、ようやく辿り着くことが出来る。 本書はそんな、死者に会いたいと願う人々の話です。 「アイドルの心得」 平瀬愛美は、大人しくて友人もそこまでいないOLだ。周囲の人から、楽しいことがなさそう、と言われてしまうような地味な女性。会社と家を往復するだけの毎日を、淡々とやり過ごしているような人生だ。 そんな彼女にとって支えになっていたのが、アイドルの水城サヲリだ。歯に衣着せぬ物言いで人気を得た元売れっ子キャバ嬢の彼女は、唐突に急逝した。自殺説や薬物依存症説など様々に話は出たが、愛美に限らず多くの人が彼女の死を哀しんだ。 愛美は、既に誰かが彼女に会ってしまっていて、もう自分が会うことは出来ないだろう、と思いつつも、噂を信じて使者の存在にたどり着いた…。 「長男の心得」 畠田靖彦は、本家の生業である工務店を継いだ長男である。昔気質の家風に育てられた靖彦は、次男の久仁彦とはまったく違う育てられ方をされた。靖彦にとっては、本家の長男であるという自覚が強すぎるほどにあった。それで周囲から疎まれることも多いのだが、靖彦は気にしなかった。 靖彦は、死んだ母親に会おうとしていた。使者の存在はその母親から聞いた。昔自分も会いに行ったことがあるのだ、と。半信半疑、というか正直まったく信じていなかったが、売ろうと思っている土地の権利証が見つからず、在処を聞こうと思い、使者に連絡を取った…。 「親友の心得」 嵐美砂は、自分に親友が出来るとは思っていなかった。常に自分が一番じゃなきゃ気が済まないという性格を自覚していたし、そういう自分がうまく付き合える相手はいないだろうと思っていた。 御園奈津は、嵐を立てる子だった。嵐を褒めて羨ましがって、そうやってお互いにいい関係でいられた。二人共漫画とかBLとかに詳しいオタクだけど、ファッションやコスメの知識にも精通していて、二人でハイブリッドオタクだよね、なんていっていた。御園の家では漫画が禁止されているらしいけど、とてもそんな風には思えないほど、嵐より知識があった。 演劇部だった二人は、あることをきっかけに気まずい関係になってしまう。そんな時期に嵐の心に忍び寄ったほんの僅かな出来心が、御園を死に追いやってしまったのかもしれない…。 「待ち人の心得」 土谷功一は、7年前に旅行に行くと言って出かけていった日向ヒカリを、たぶん今も待っているのだった。 9年前、前を歩いていた女性が風に煽られて転び怪我をしたことがきっかけだった。自分の好みではないはずのギャルメイクのその女性は、お礼にと誘った食事でお金が足りなくて会計が出来なかったり、ポップコーンとコーラ付きの映画に感動したりと、土谷にとって新鮮な反応をしてくれる女の子で、どんどんと惹かれていった。ヒカリが事情を抱えているということもなんとなく分かっていて、しばらくして一緒に暮らすことになった。 結婚して欲しい、とプロポーズした直後、ヒカリはいなくなった。会社の同期からは、お前は騙されていたんだ、早く新しい女性を見つけろ、と言われる。そうなんだろうか、自分はまだヒカリを待っているんだろうか…。 「使者の心得」 渋谷歩美は祖母から、使者の能力を受け継がないか、と言われた。心臓を患って入院している祖母は、まだまだ元気そうではあるけれども、ちょっと気弱になっているようでもあった。 祖母から使者の話を聞いた時、まだ半信半疑だった。実際にその能力が本物だと思えるようになったのは、使者の見習いとして初めて依頼人に会った件で、アイドルの水城サヲリを見た時だ。それから何人か依頼人と死者にあったが、会えば会うほど、使者の存在とはなんなのだろう、と考えさせられていく。 使者の能力を受け継ぐと、死者に会うことは出来ない。だから能力を受け継ぐ前に誰に会いたいか決めておきなさい。祖母にそう言われた。身近な死者は二人しかいない。父親に殺されたらしい母親か、母親を殺し自殺したらしい父親…。 というような話です。 相変わらずなかなかいい話を書きますね、辻村深月は。死者に会わせる、という設定はまあよくありがちかなという感じはしますけど、全体の構成がうまいのでベタな感じはしません。初めの4編までは依頼人視点の物語で、ラスト1編が使者視点の物語、という構成はよく出来ているなという感じがしました。なるほど、だから一番初めの依頼がアイドルだったのか、なんて思ったり。 個人的に一番好きだったのは、「待ち人の心得」です。これは泣きそうになりましたね。日向ヒカリがちょっとズルイですよね。こんな女の子、なかなかいないと思うんですけど、いたとしたらちょっとズルイですよね。ズルイって表現もなんかおかしい気はするんですけど、まあそう思っちゃいます。一つ一つの反応とか、意外にきっちりしてるところとか、そういうところがいいなぁ、って感じしちゃいます。いや、ホント、この話はズルイし、日向ヒカリはズルイ(笑)。 「親友の心得」もよかったですね。これは、ラストがなかなか凄いです。これまでの辻村深月の作品を読んでる人なら、辻村深月らしいな、と思える感じじゃないかな、と思います。少なくとも僕の中では、辻村深月ってこういうことを結構やるな、というイメージなんですね。御園と嵐という二人の女子高生の、些細なんだけどそれぞれにとっては大事だし決定的な出来事というものをいくつか積み重ねていくことで、致命的なすれ違いを生み出していく過程は、さすがだよなという感じがします。 「使者の心得」は、ある出来事の真相がうまく出来ているなと思いました。その真相を知るまでは、なんだか余計な設定が多いなぁ、と思っていたんですけど、全然余計じゃなかったですね。きちんと張られていた伏線にまるで気づかず、こんな余分な設定いらないだろ、とか思っていた自分が恥ずかしいです(笑)。祖母と孫が時々交わすとぼけたやり取りもいいし、使者見習いとして戸惑いながらも前に進んでいこうとする歩美がいい味出してます。 最後に。これは僕の辻村深月への期待の大きさの現れだと思って欲しいのだけど、やっぱり辻村深月は、大人を描くよりも子供を描く方が圧倒的にうまい。この差は、少なくとも僕が感じる限りでは、相当な開きがあるよな、と思います。偉そうなことを言えば、ここの壁を超えることが出来れば、辻村深月は作家としてさらに高いところまで行けるんじゃないかな、なんて思っています。やっぱりどうしても、辻村深月が描く中高生の凄まじさみたいなものの印象が強いので、大人をいかにそのレベルで描けるかというのが僕の大きな期待です。 そんなわけで、良い作品だったと思います。違った境遇の様々な人々が死者に会いたいと願い、様々な結末を得ていく過程で、自分だったらどうだろうな、なんて考えてしまうんではないかなと思います。是非読んでみてください。

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みんなのレビュー (2)

Readeeユーザー

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4.1 2019年10月12日

それぞれのストーリーが好き

Readeeユーザー

starstarstarstarstar 5.0 2019年04月05日

(無題)

この作者の本を初めて読みました。 死んでしまった人と一度だけ会える。 なんか聞いたことある設定だなあと思いましたが、それだけではない良さがありました。 ちょっとミステリー的な要素もあり。 最後にツナグである歩美くんのことが語られるわけですが、これもまた良い。 ほんわりします。 続きがあるといいな。

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