
オズの魔法使い
新潮文庫 Star Classics名作新訳コレクション
ライマン・フランク・ボーム / 河野万里子
2012年8月31日
新潮社
539円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
大たつまきに家ごと運ばれたドロシーは、見知らぬ土地にたどりつき、脳みそのないかかし、心をなくしたブリキのきこり、臆病なライオンと出会う。故郷カンザスに帰りたいドロシーは、一風変わった仲間たちとどんな願いもかなえてくれるというオズ大王に会うために、エメラルドの都をめざす。西の悪い魔女は、あの手この手でゆくてを阻もうとするが…。世界中で愛され続ける名作。
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自分を信じ、心の思うままに行動する。
20世紀初頭にライマン•フランク•ボームによって描かれる近代版アンデルセン、イソップ童話。 カンザスの広大な土地におじさんとおばさんと一緒に生活する心優しき少女、ドロシー。 そんな彼女がある日竜巻に巻き込まれてオズの世界に飛ばされ、元の生活に戻るために冒険が始まる。 その道中で、 •全身藁でできたかかし。 •魔女によって全身ブリキに変えられてしまったきこり、 •その体とは真逆に臆病なライオン。 と出会い、共に助け合い、オズにそれぞれ夢を叶えてもらうために、エメラルドシティを目指す。そんなお話。 たしかに道中は猛獣に襲われたり、魔女との争いがあったりとファンタジックな場面が多いため、子供でも読みやすい。 昔読んだときは単純に面白かったな。という感想だった。 しかし大人になってもう一度読んでみると、また見方が変化してくる。まず、それぞれが求めるものがとても哲学的なのだ。ドロシーはまだわかる。 帰りたい、元の生活に戻りたい。 たしかに、おじさんおばさんは無口で面白くない時もあったけど、失ってみて初めてわかる愛情や慕情に焦がれていたのだろう。しかし残りの御三方はそれぞれ、脳みそ、心、勇気という、私たちが持っていても扱うことが難しいそんな事柄を求めるのである。 結論から行くと、オズはペテン師だったし、彼らの問題はプラシーボ効果で解決してしまった。 つまり彼らはその実態を持っていなかったと自分で思い込んでいたけれども、大切なのはそのものではない。 持っているか持っていないかに関係なく、それらによる実際の行動に移せるかどうか。 ところどころで、それぞれ〜がないからと口にする場面が多々ある。しかし、その言葉と裏腹にふとした場面で、いざというときに、 かかしは奇抜なアイデアを思いつき、 きこりは優しさを見せ、 そしてライオンは勇姿ある行動ができている。 つまり彼らは気付いてないだけで、もともと持ち合わせている。確証バイアスとして、実態となるものや他人による承認が欲しかったのではないか。もっと簡単にいうと、自分を肯定できれば、自身が有ればすぐに解決した悩みだったのだろう。しかし言葉では簡単でも、実際に自分を不安に捉えてしまうとその渦巻から抜け出せる人はそうそういない。 You will fake it until you make it. こんな言葉がある。できるようになるまで、そんなフリをしていればいい。 See the world as it should be. こんな言葉もある。自分のみたいように世界を見ればいい。 つまりありのままに自分の目に映る世界が正解ではない。 相手にどのようにみられ、そしてどんな姿を自分が望んでいるのか。その姿を目指して、なりきりそして最終的には自分のものにしていく。自信を持てるようにしていく。 そんなプロセスを生み出すための冒険だったのだろう。 深く考えさせれる。 また後書きにもあったが、何もないものたちを(ドロシーやオズ)をすごい魔法使いとして仕立て上げてしまうそんな民衆行動による偶像崇拝も問題視されていた。 相手の要求や求めるものに逆えず、そのように振る舞ってしまうそんな心弱気ものたち。 オズとドロシーの成り行きは似ているかもしれない。 しかしながら、その結末は違った。 結局オズは誰も頼ることができずに、真実を打ち明けることなく自分1人で抱え込んで、逃げ出してしまった、 しかしドロシーは自分には無理だと正直な気持ちを伝えながらも周りを頼り、仲間と共にその困難を乗り越えていく。 そんな綺麗な心が彼女に苦境を乗り越える自信と力とそして、周りのものを与えたのだ。 純粋な心と自信。この小説の2大テーマ。 場合によっては相反することがあるこの2つの概念のバランスがとても大切。そんなことを教えてくれました。 余談。 思ったよりも殺傷する場面や良しとされていないことが数々出てくる場面が多く少しびっくり。
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自分を信じ、心の思うままに行動する。
20世紀初頭にライマン•フランク•ボームによって描かれる近代版アンデルセン、イソップ童話。 カンザスの広大な土地におじさんとおばさんと一緒に生活する心優しき少女、ドロシー。 そんな彼女がある日竜巻に巻き込まれてオズの世界に飛ばされ、元の生活に戻るために冒険が始まる。 その道中で、 •全身藁でできたかかし。 •魔女によって全身ブリキに変えられてしまったきこり、 •その体とは真逆に臆病なライオン。 と出会い、共に助け合い、オズにそれぞれ夢を叶えてもらうために、エメラルドシティを目指す。そんなお話。 たしかに道中は猛獣に襲われたり、魔女との争いがあったりとファンタジックな場面が多いため、子供でも読みやすい。 昔読んだときは単純に面白かったな。という感想だった。 しかし大人になってもう一度読んでみると、また見方が変化してくる。まず、それぞれが求めるものがとても哲学的なのだ。ドロシーはまだわかる。 帰りたい、元の生活に戻りたい。 たしかに、おじさんおばさんは無口で面白くない時もあったけど、失ってみて初めてわかる愛情や慕情に焦がれていたのだろう。しかし残りの御三方はそれぞれ、脳みそ、心、勇気という、私たちが持っていても扱うことが難しいそんな事柄を求めるのである。 結論から行くと、オズはペテン師だったし、彼らの問題はプラシーボ効果で解決してしまった。 つまり彼らはその実態を持っていなかったと自分で思い込んでいたけれども、大切なのはそのものではない。 持っているか持っていないかに関係なく、それらによる実際の行動に移せるかどうか。 ところどころで、それぞれ〜がないからと口にする場面が多々ある。しかし、その言葉と裏腹にふとした場面で、いざというときに、 かかしは奇抜なアイデアを思いつき、 きこりは優しさを見せ、 そしてライオンは勇姿ある行動ができている。 つまり彼らは気付いてないだけで、もともと持ち合わせている。確証バイアスとして、実態となるものや他人による承認が欲しかったのではないか。もっと簡単にいうと、自分を肯定できれば、自身が有ればすぐに解決した悩みだったのだろう。しかし言葉では簡単でも、実際に自分を不安に捉えてしまうとその渦巻から抜け出せる人はそうそういない。 You will fake it until you make it. こんな言葉がある。できるようになるまで、そんなフリをしていればいい。 See the world as it should be. こんな言葉もある。自分のみたいように世界を見ればいい。 つまりありのままに自分の目に映る世界が正解ではない。 相手にどのようにみられ、そしてどんな姿を自分が望んでいるのか。その姿を目指して、なりきりそして最終的には自分のものにしていく。自信を持てるようにしていく。 そんなプロセスを生み出すための冒険だったのだろう。 深く考えさせれる。 また後書きにもあったが、何もないものたちを(ドロシーやオズ)をすごい魔法使いとして仕立て上げてしまうそんな民衆行動による偶像崇拝も問題視されていた。 相手の要求や求めるものに逆えず、そのように振る舞ってしまうそんな心弱気ものたち。 オズとドロシーの成り行きは似ているかもしれない。 しかしながら、その結末は違った。 結局オズは誰も頼ることができずに、真実を打ち明けることなく自分1人で抱え込んで、逃げ出してしまった、 しかしドロシーは自分には無理だと正直な気持ちを伝えながらも周りを頼り、仲間と共にその困難を乗り越えていく。 そんな綺麗な心が彼女に苦境を乗り越える自信と力とそして、周りのものを与えたのだ。 純粋な心と自信。この小説の2大テーマ。 場合によっては相反することがあるこの2つの概念のバランスがとても大切。そんなことを教えてくれました。 余談。 思ったよりも殺傷する場面や良しとされていないことが数々出てくる場面が多く少しびっくり。
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