
ふがいない僕は空を見た
窪美澄
2010年7月31日
新潮社
1,540円(税込)
小説・エッセイ
これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。
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(無題)
デビュー作にしてR‐18文学賞、山本周五郎賞を受賞、本屋大賞2位。すごい作家が現れたものだ、と本の内容の前知識なしで読み始めたこの本、いきなりエロくてびっくりしましたが、面白かったですよ。 女性作家による女性のための本と称されているようですが、読んでみてなるほどと思いました。妊娠や出産をテーマにしている彼女の表現模写は生々しく、人によっては嫌悪感を抱くかも知れません。 性的表現について、作品に大きく関わってくるのは、書き手の性です。男性が書く性表現と女性が書く性表現はやはり違います。例えば男性作家が女性の独白体で書いたとしてもやはり性表現は異なります。その点本作品は際どい性表現がありますが、それは男性には真似ようにも真似られない、女性特有の肌感覚に基づくものです。 この作品は全体を通して性と生について語られています。登場人物である斉藤卓巳を中心に短編が5つ。斉藤以外にも語り手はそれぞれの短編で変化します。 5つの連作短編集ですね。「ミクマリ」と「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」の対で終わらないところが、本作品のいいところです。「ミクマリ」は斉藤卓巳の初々しさや瑞々しさを感じさせる思春期の性。卓巳と関係を持ったあんずの「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」。特に不妊治療を無理矢理やらせる義母はなんなんでしょう。いじめられ続け、好きでもない男と結婚し、さらに子供が出来ないと言って責められる女性の救われなさが切ないですね。 「2035年のオーガズム」は一転して女子高生が主人公のお話です。鬱屈した主婦と思春期真っ只中の女子高生を両方描いて引き続き惨憺たる気分にさせられます。 「セイタカアワダチソウの空」は、様々に事情があって、最底辺に近いところでの生活を余儀なくされている福田を巡るストーリーです。そんなマイナスの連鎖からなんとか抜け出したい福田は、バイト先にいる人から勉強を教わることにします。超有名大学を卒業したらしいのですが、コンビニでアルバイトをしているという謎めいた存在で、福田や友達に親切にしてくれるのです。それは少年愛からでした。 「花粉・受粉」は、助産婦である卓巳の母親の話です。セックスから始まった物語が、子供を産むという物語で終わるというのが実に象徴的だと思いました。また、物語は、全編をあんずの夫の性に対する屈折したどす黒い情念が支配していますが、拓也の母親の現実に地をつけて、逞しく生きる姿を描いて読者に救いをもたらします。
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(無題)
性と生。精と制。良かった。
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