約定

青山 文平

2014年8月22日

新潮社

1,870円(税込)

小説・エッセイ

小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱することになった行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た奇妙な頼み事と劇的な顛末を描く「三筋界隈」。果し合いの装束のまま、なぜか独りで腹を切った侍の謎を追う「約定」。他、武家としての生き方に縛られながらも、己れの居場所を掴もうともがき続ける武士の姿を浮き彫りにした本格時代小説。

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3.8 2018年02月14日

6話の短編が収録された短編集である。あちこちに発表された短編を集めて一冊の単行本に仕上げたというより、初めから一冊の書籍刊行を念頭に書かれた短編なのであろう。その証拠に収録された6編はそれぞれ全く違う内容であるが、一点だけ共通点がある。それは「刀」である。それぞれの物語は、刀を基軸に展開される。 まず第1話の「三筋界隈」は、梶原一刀流の使い手が自分の業物と町道場主の鈍刀を取り替え、尋常の勝負の結果、梶原一刀流の達人は死に場所得るとともに道場主は名声を得て道場が繁盛するお話である。 つぎの「半席」は、名刀の脇差をタナゴ釣りの釣竿とを交換するところから、悲劇というか、男の哀愁を帯びた物語が展開する。 「春山入り」の刀は、際物である。妖刀と言っても良い。分かりやすく言えば良い刀ではなく、人を斬りたくなる刀である。幼い頃から同じ道場で剣の修行に励んだ武士が、勤めとはいえ、斬り結ばなければならない羽目に陥った時の心理が描写される。 「乳房」。これだけは 那珂という女性が主人公である。だから刀は養父の清蔵から与えられた懐剣である。養父が薦める西崎弘道に嫁ぐことになった那珂であったが、彼女は夫を誤解していた。 「約定」の刀は名刀・備前長船である。武士は名誉のために腹を切り、名誉のために果たし合いをする。武士の世界では、命より重いのが名誉である。しかし、その価値観と現実との間で軋轢を生むとき、名誉を何より重んじる武士はどう行動するのか。 「夏の日」に登場する刀は相州・康国である。持ち主は名主の落合久兵衛。名主の鑑として名字帯刀を許されたのである。久兵衛は旗本・西島家の知行地の名主である。西島家の嗣子・雅之は剣の達人であったが、城中でイジメにあう。その雅之が、胆力を鍛えて成長する姿を描く。

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