とせい

中公文庫

今野敏

2007年11月30日

中央公論新社

880円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

日村誠司が代貨を務める阿岐本組は今時珍しく任侠道をわきまえたヤクザ。その阿岐本組長が、兄弟分の組から倒産寸前の出版社経営を引き受けることになった。舞い上がる組長に半ば呆れながら問題の梅之木書房に出向く日村。そこにはひと癖もふた癖もある編集者たちが。マル暴の刑事も絡んで、トラブルに次ぐトラブル。頭を抱える日村と梅之木書房の運命は。

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3.8 2018年01月24日

小説を読んだ感想を「まるで漫画みたい」と述べるのは、誉めているのか、貶しているのか僕には分かりません。何故なら僕の中にはマンガは子どものもので、大人は活字の世界で遊ぶ、との基本認識があるだけだからです。コレは決してマンガはをバカにしたり、低く見ているのではなく、僕自身がマンガの世界より活字の世界で想像を働かした方が楽しい、との個人的嗜好に基づくものです。 このシリーズ、前回読んだのが「任侠病院」。其の伝でいけば今回は「任侠書房」です。利益追求の株式会社と違って社会性が高い病院経営に反社会的勢力ヤクザが関わるちぐはぐさが滑稽さの原点であったのと同様に、文化度の高い出版業をヤクザが営むねじれが面白さの源です。もう一つが「人を見抜く力が無ければヤクザは務まらない」「ヤクザたるもの情報収集能力と行動力が問われる」とのたまう阿岐本組長の突出した人格ですね。さらには、代貸の日村が味わう中間管理職の悲哀はサラリーマンには身につまされます。親が黒といえば白も黒、の世界で組長命令で日村が乗り込んでいった先は、すべて敵だらけです。カタギの世界はヤクザに反感を持っていますから、心が休まる暇もない悪戦苦闘の日々が続きます。 そんな中で、ひとりまたひとりと敵だった人が味方につき始めます。そのきっかけとなるのが 阿岐本組長の素朴な好奇心に基づくお茶目さだったり、ヤクザの社会で培われた貫禄だったり、あるいは日村の律儀さだったり組の若い衆の特技や情熱だったりします。オセロの駒をひっくり返すように味方を得て、次第にヤクザが弱小出版社の再建に成功する様子は、読んでいて爽快感を伴います。 人は石垣人は城、と昔から言われるように阿岐本組長の人材活用能力の高さには眼を奪われます。ヒト・モノ・カネの経営資源の内、ヒトの使い方にはヤクザ独特のノウハウがあるようです。出版不況が言われて久しいものがあります。業界自体が長期凋落傾向にある中で経営資源に恵まれない弱小出版社の先行きに明るいものがある訳がありません。現実に打ちひしがれた編集者の士気は、見る影もありません。そこに喝を入れたのが阿岐本組長でした。人事異動で社内を活性化させたのです。売れる書籍を生み出す秘訣は、編集マンが作品に惚れる事にある、この原則を編集者自らが悟る為のショック療法でした。ヤクザの教育能力は侮れませんね。 さて、本作のストーリーにも触れなければ片手落ちですね。本書のクライマックスは警察相手の闘いです。相手は警察というよりマル暴の悪徳警官ですね。我慢にガマンを重ねて最後は「死んでもらいます」と任侠のスジを通す健さんの世界です。阿岐本組の若い衆・真吉はマル暴刑事の挑発に乗せられ刑事への暴行に及びます。真吉が逆上したのは万年筆が原因でした。それは雑誌編集長・片山からの入社祝いでした。社会の厄介者ヤクザの真吉にとって、編集者として扱われた証として何より大切なものだったのです。贈り主の目の前で壊されたら、ヤクザ者は命すら投げ出すものだ、と真吉の心情を汲む日村でした。その報告を受けた組長は始め、烈火のごとく怒るのでしたが、日村が真吉がマル暴刑事に殴りかかったのを呑み込んだのを知ると、自ら警察との喧嘩を決意するのでした。

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