日本文学史 - 古代・中世篇一

中公文庫

ドナルド・キーン / 土屋政雄

2013年1月31日

中央公論新社

1,152円(税込)

人文・思想・社会 / 文庫

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3.3 2018年01月28日

当代の碩学ドナルド・キーン博士の日本文学史、極めて平易で分かり易いです。原文は英語ですので訳者がうまいのかもしれません。もっとも、今回の文庫化に当たって、既に刊行されている「日本文学の歴史」を底本としているそうですから、文章も練れているのかもしれませんね。このシリーズ、手を出そうかどうか、実は気にはなっていたんですが、暁さんが「面白い」と言われるものですから、背中を押されてしまいました。 キーン博士の日本通は等しく知るところですが、現代の日本人の習性まで見抜いています。今時の日本人は大学入試が済めば、古典文学に親しむ事なぞ皆無である事を前提に懇切丁寧に古典を解説してくれています。 本書はシリーズ第一巻古代・中世篇で、内容は大変に長い序文と古事記、奈良時代の漢文学、万葉集、平安時代前期の漢文学です。この長い序を読むだけで日本文学が分かったような気になってしまいます。次が古事記ですが、古事記を日本文学史の劈頭に位置付ける見識には恐れ入ります。確かに物語として面白いですから、文学としてもいいとは思いますが、日本人研究家はまずそうしませんね。良心的な学者でも歴史史料として読みますから、これまで解説を読んでいても隔靴掻痒の感がありました。ところが、本書を読むと「なるほど、そういうことだったんですね」とストンと腑に落ちます。 日本書紀では聖徳太子の17条の憲法を取り上げていますが、これが日本人の精神性を考える上で興味深かったので、ご紹介します。第1条和かなるを以って貴しとし、これは儒教精神だというんですね。第2条篤く三宝を敬え、三宝とは仏・法・僧ですので仏教ですね。儒教と仏教が相容れないのはその後の歴史が証明していますが、聖徳太子はこの世のことは儒教、永遠のことは仏教と両方の思想体系を受け入れ、八百万の神の原始神道は中国式の中央集権国家建設には邪魔なので排除したという、解釈です。これにはちょっと首を傾げざるを得なかったですね。なぜなら、本書では引用していませんが、第3条が、三に曰く、詔を承りては必ず謹(つつし)め、君をば天(あめ)とす、臣をば地(つち)とす。天覆い、地載せて、四の時順り行き、万気通ずるを得るなり、とあります。これは、天皇を頂点とする社会秩序を述べたもので、こちらが儒教の考え方ではないかと私には思えます。第1条は元々日本人には、争い事を嫌う精神性があるのだから、それを大事にしなさい、と言っていると、私は思いますが如何でしょうか。

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