獅子は死せず(下)

中公文庫

中路啓太

2015年11月30日

中央公論新社

748円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

大坂冬の陣で大きく傷を負った豊臣家。毛利勝永は一人篭城での徹底抗戦を訴えるも、大坂衆を中心に徳川との和議が成立してしまう。無念の勝永は豊臣を離れ、商人への転身を決意。海外貿易に死地を求めるが…。誰より理知的でありながら、自らも抑えきれない強い生命力と、周囲への深い愛情を宿した戦国最後の猛将の戦い。

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もののふの死に様ではなく、死士の生きざまを問う物語。

-- 2021年03月17日

▼概要 ・あらすじ 大坂冬の陣で大きく傷を負った豊臣家。毛利勝永は一人籠城での徹底抗戦を訴えるも、大坂衆を中心としに徳川との和議が成立してしまう。無念の勝永は、豊臣を離れ、承認への転身を決意。海外貿易に死地を求めるが…。誰よりも理知的でありながら、自らも抑えきれない生命力と、周囲への深い愛情を宿した戦国最後の猛将の戦い。 ■概要 第七章 君主の道 第八章 再戦 第九章 金瓢の馬印 第十章 又兵衛死す 第十一章 陽炎 第十二章 天王寺の鬼 ■内容 下巻の本書は、大坂の冬の陣の終焉から始まる。和議にまとまりつつある大坂城において、勝永は一人だけ、和議に反対する。理由は明確だ。籠城をし続けることこそが、豊臣家於生きる道であるからだ。しかし、死に花を咲かせたい大坂衆や天守焼け落ちに狂奔する淀殿らによって、大坂城は和議に傾いていく。 ただ、その絶望の中で、勝永は一筋の光明を見る。豊臣秀頼が、1人の君主として、自ら決断を下したからだ。しかし、その決断は和議の合意に他ならなかった。 「人の世とはままならぬの」 下巻は、彼の世の中に対する諦観によって始まる。 和議により堀が埋められ、最早、裸城となった大坂城で、勝永は「死士の道」を再度考え直す。それは、必ずしも武士にこだわることではないのではないかと。 P58「死士とは戦場のみにいるものだろうか。遠い異国との商いにも死士の居場所はあるのではないか。」 自らの死を華やかにせんとするため、秀頼を巻き添えにするのは不忠の極みとまで言い放ち、商人になると宣言した勝永は、他の大坂衆から、また家臣たちからも孤立していく。 商人になるという勝永の覚悟を、家臣達へ説明する中で、こんな一節がある。 P117「死士たらんとするには、死に切らねばならぬ。~華々しい最期をとげるために死処を探す者は、死に切っておらぬ。まだ、この世の人の耳目を気にしているのだ。」 勝永は、どうしても家臣たちを狂死の集団にしたくなかったのだ。死士として、それがいかに苦しいい道であろうとも、現実的に生きるための戦いをさせてやりたいと想っていたのであった。 勝永の死にざまとは、生きざまとは、かくも理性的で、そして優しいものであったのだ。 しかし、この後、乾坤一擲の策を思いついてしまった勝永は、大坂の夏の陣での戦いに身を投じていく。ここで嬉々として彼が語る戦力は、「家康の首を取る」ことであった。道明寺での戦い、夏の陣の本線での戦、そして勝永が最後に助左衛門に託した役目。 毛利勝永という武将の想いを最後の最期まで堪能いただきたい。 また、本編では、大坂衆として、世間に名を知られた、真田幸村(信繁)や後藤又衛門も登場する。これらの人物は、死に華を咲かせ、後世に名を遺すために戦いに出てきたのであったが、彼らが死に至る際、勝永の想いを受けた死にざまが描かれる。こちらもぜひ、アナザーストーリとして描いてほしいくらいである。 はてさて、勝永は大坂夏の陣にて死んだのか、その後も生きていたのか。個人的には大海原を舞台に商人としての活躍をしていてほしいものであるが…。助左衛門同様、そんなことを記すのは野暮であろうか。これは読み手が自由に想像を膨らませればいいのであろう。

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