ホーキング、宇宙を語る

ビッグバンからブラックホールまで

ハヤカワ文庫

スティーヴン・ウィリアム・ホーキング/林一

1995年4月30日

早川書房

814円(税込)

科学・技術 / 文庫

この宇宙はどうやって生まれ、どんな構造をもっているのか。この人類の根源的な問いに正面から挑んだのが「アインシュタインの再来」ホーキングである。難病と闘い、不自由な生活を送りながら遙かな時空へと思念をはせる、現代神話の語り部としての「車椅子の天才」。限りない宇宙の神秘と、それさえ解き明かす人間理性の営為に全世界の読者が驚嘆した本書は、今や宇宙について語る人間すべてにとって必読の一冊である。

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-- 2019年12月24日

スティーヴン・W・ホーキング「ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで―」

物理学という学問は、様々な分野で様々な形で発展し続けた分野であるが、今やその大局的な目標は一つに絞られたと言ってもいい。 それは、アインシュタインが提唱した一般性相対性理論と、20世紀最大の物理学的発見であり、アインシュタインが死ぬまで認めなかったことで有名な量子力学(アインシュタインが認めなかったのは、不確定性原理と呼ばれるもので、「神はサイコロを振らない」という言葉が有名)を統合することにある。 少しだけこの二つの理論について説明しよう。 一般性相対性理論は、アインシュタイン20代の若さでが提唱した驚くべき理論で、発表当時その理論を理解できたのは、世界中でも2人しかいなかったと言われるほどである。ニュートン物理学が厳密には間違っていたことを示した理論でもあり、物理学界に大きな波紋をもたらした。 さてそんな一般性相対性理論について簡単に説明することは難しいが(そもそも僕自身、全然理解できていないのだが)、その奇抜さが分かりやすいものについて紹介しようと思う。 アインシュタインは、どんな状態にある観測者から見ても、光の速度は一定である、ということを示した。これは、僕らの日常の生活から考えれば、非常に奇妙なことだとわかるだろう。 例えば車に乗っているとしよう。自分の乗っている車が時速100キロである時、隣を走っている車が時速100キロで走っているならとまって見えるし、時速100キロ以下なら遅れて見えるし、時速100キロ以上なら進んで見える。これは日常的に想像しやすい。 では、ちょうど光の速度で飛んでいる宇宙船に乗っていると想像しよう(現実にはありえないが)。この宇宙船の窓から光を観測した場合、上記の車の例で考えれば、光は止まって見えるはずである。しかし、アインシュタインは、このような場合でも、光はある一定の速度で観測される、と提唱したのである。これは、ニュートンによって作られた古典物理学を大きく否定するものだった。 アインシュタインはこのことを、『もし自分が高速で動いていると仮定しよう。その時、自分の目の前に鏡があったら、その鏡に自分の顔は映るだろうか?』という発想から導き出したと言われている。そんな想像をすること自体がまずすごいと思うが、そこからこんなことを考え出してしまうこともすごい。 さてもう一つの、量子力学の方の説明をしよう。こちらも、簡単に説明することはかなり困難で、もちろん僕自身もちゃんと理解しているとは言えないので、最も有名で理解しやすいだろうと思われる、不確定性原理について書こうと思う。 不確定性原理というものは、観測に関して言及したものであり、観測によってある粒子の位置と速度を同時に知ることはできないということを示したものである。 観測する、ということは、なんらかの光を対象に当てる、という風に考えることができる。光というものは波の性質も持つが、同時に粒子としての性質も持ち、この光の粒子が、観測する対象である粒子に衝突することで観測が行われるわけだが、衝突によって観測する対象の位置や速度に影響を与えてしまい、光の粒子を当てる以前の位置や速度を正確に知ることはできない。 この考え方も、物理学に大きな波紋をもたらした。それまでは、あらゆる物理学の法則を用いれば、あらゆる状況の観測データを知ることによって、別の状態を計算によって知ることが出来ると考えられていた。例えば、サイコロの振る舞いは、サイコロが地面に当たる角度や空気抵抗、地面との摩擦や初速度などによって支配されており、そうした条件を精密に一致することが可能なら、同じ目を毎回出すことができる、と考えられていたわけである。 しかし、不確定性原理は、例えどれだけデータを精密にしても、観測結果が同じとは限らないことを示してしまった。この不確定性原理の登場によって量子力学の道が開かれたわけである。 さて、この二つを統合するということだが、一方は宇宙に関する理論であり、一方は量子に関する理論である。一体何故この二つを統合しなければならないのか…。 それが、宇宙の始まりに関わっているからである。 宇宙の始まりは、ビッグバンと呼ばれる、言ってみれば超爆発のようなものだという考えが今は支配的である。そのビッグバンの時点で宇宙は、極小の大きさを持ち、無限大の質量を持つ物質であるとされる。今、宇宙におけるほとんどすべての現象は、一般相対性理論によって説明できるが、このビッグバンの、無限大の質量を持つ状態については何も記述することが出来ない。しかし、小さな物質の振る舞いを記述する量子力学の考えを相対性理論に組み込むことができれば、宇宙の始まりを、そして宇宙のすべてを記述する完璧な理論ができるかもしれない。 物理学にも様々な分野があるが、大局的にはこの一般相対性理論と量子力学の統合に力が注がれているというのは、そういうことなのである。 その最先端を行く物理学者が、本作の著者、ホーキングである。宇宙の始まりを研究し続け、ニュートンと同じ椅子に座り、アインシュタイン並の評価と業績を手にするのではないかと言われている天才物理学者は、しかし別の形で有名であるかもしれない。 車椅子の物理学者として。 ホーキングは21歳の時、筋萎縮性側索硬化症と呼ばれる、筋肉が脂肪に変わってしまい機能しなくなるという難病に冒され、余命1、2年と宣告された。しかし、身体全体のほんのわずかな部位の筋肉しか動かすことができないにも関わらず、60歳を超えた今でも、宇宙の始まりについて思索を続けている。業績的にもそうだが、その知名度という点でも20世紀最大の物理学者だと言っても過言ではないだろう。 さて、そんな世界屈指の物理学者が、一般向けに物理の本を書こうと思い立って出版まで至ったのが本作である。驚くべきは本作の売れ行きで、89年6月に初版が発行され、90年の10月に既に34版まで重ねている。一年間で34回の重版、しかもハードカバーでさらにそれが物理の本だということを考え合わせれば、本作はあまりにも驚異的なセールスを見せたのだろうと思われる。確かな記憶ではないが、最近また本作(あるいは本作の続編のようなものだたかもしれないが)がまた注目を集めているようで、書店に回ってくる(どこから来るのかはよく知らないが)メールでそんなことが書いてあった。それにしても、物理学の本でここまでのセールスを重ねた本は、他に数えるほどしかないだろう。 というわけで本作への僕の評価だが、その圧倒的なセールスについて疑問に思うほど、本作はちょっと難しい、と思った。一般向けに書いたのだろうし、冒頭で数式は一切入れないと宣言しているほどなのだけど、それでも、物理を結構勉強している人でないとちゃんと理解するのは難しい内容ではないかな、と思う。僕は大学まで理系で通した人間で、物理もかなり好きな部類だけど、それでもちょっと難しくて、よくわからない部分を流し読みする形で本作を読んでしまうほどだった。 僕が最近読んだ、「リーマン博士の大予想」という、リーマン予想と呼ばれる数学の難問についての本があるけれども、あの本は非常に易しく書かれていて、恐らく文系の人にも十分理解できる内容だと思うけど、本作は恐らく、文系の人には読み通すのが難しいだろうな、という内容でした。 さらに残念なのは、著者がホーキング自身だという点もあるのだろうけど、ホーキングの物理学における功績のようなものが一体どういった点なのかということが非常にわかりずらいです。僕としては、ホーキングが考える宇宙というものを非常に分かりやすい形で書く一方で、ホーキング自身がどのような形で物理学に貢献していったのかという体系的な話も期待していたので、ちょっと残念かなという感じがしました。 恐らく本作は名著に数えられるのだろうけど、僕としては本作を読むよりは、例えば雑誌のニュートンを読んだ方がよりわかりやすく理解できるのではないだろうか、という気がします。やはり、専門化が自分の専門分野について書いた本というのは、どんなに易しく書いたつもりでも、難しく思えてしまうものだろうと思います。 というわけで、残念ながらちょっと難しいかな、という気がします。

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