イン・ザ・プール
奥田 英朗
2002年5月14日
文藝春秋
1,361円(税込)
小説・エッセイ
トンデモ精神科医伊良部登場!深夜のプールに忍び込みたいと思ったこと、ありませんか?水泳中毒、ケータイ中毒、持続勃起症…ヘンなビョーキの博覧会。新・爆笑小説。
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(無題)
なんと言う小説なのだろうか、とにかく可笑しければ良いのだろうか、との思いが第一話を読んだ感想であった。しかし第二話以降まで読み進めると、この小説はただおかしいばかりじゃないぞ、現代社会に対する強烈な風刺が込められているとの思いが強くなってきた。 第一話はパニック障害から水泳依存症に陥った大森 和雄の物語。第二話は、波風を立てることを嫌う故に感情を抑えて暮らしを送る田口哲也。彼はストレスが原因で陰茎剛直症になってしまう。第三話の安川弘美は、自意識過剰すぎて妄想に悩まされる。第四話は高校2年生の津田雄太が主人公である。雄太はケータイ依存症である。そして第五話。ルポライターの岩村義雄は強迫神経症である。 どの話も今の世の中では、いかにもありそうなことである。これに対して、絶対にあり得ないのがこれら患者の治療に当たる精神科医・伊良部一郎の存在である。何しろ世間の常識の外で生きているような男である。ノーテンキと言おうか、とにかく自己肯定感100%の性格である。言ってみれば、精神疾患を抱える患者とは正反対の位置に立っているのである。ところが、この医師、治療らしきことは何もしないのだが、不思議と患者は快方に向かうのだった。なんだか、現代医療や現代人の精神性に鋭く踏み込んでいるような気がする。
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