楽園 上
宮部 みゆき
2007年8月6日
文藝春秋
1,780円(税込)
小説・エッセイ
「模倣犯」事件から9年が経った。事件のショックから立ち直れずにいるフリーライター・前畑滋子のもとに、荻谷敏子という女性が現れる。12歳で死んだ息子に関する、不思議な依頼だった。少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたというー。
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もこりゅう
女性に対してとてもやさしい視点でありながら、とても厳しい視点でもある。
模倣犯から9年、ルポライター前畑滋子の元に持ち込まれた新たな調査依頼は、交通事故で死んだ息子がサイコメトラーであるかどうか―。と書くと、なんとも現実離れした話かとも思われるかもしれないが、この話のキモはそこではない。その疑義を調査していくきっかけとなった別の事件、その事件の暗部に迫っていく様は、なんともいえないおもしろさがあり、かなしさがある。 宮部みゆきならではの視点で描かれている作品である。なんというか、女性に対してとてもやさしい視点でありながら、とても厳しい視点でもある。 この作品ではとても重い問いかけがある。家族の中に「悪」が生まれた場合の対処である。性善説からすれば根っからの悪は存在しないし、性悪説によれば後天的努力で善人になれる。人を悪たらしめるものは育った環境、つまり関係する人々に他ならない、と考えるなら、責任を取るのは家族なのか?そして実際そうなったとき、家族はどう対処すべきか?積木くずしを見ればいいのか?ほんと、子育てってやつは正解がないから難しいよ。 しかし若者ってのは、なんで悪ぶるんだろうなぁ。。想像力が欠如しているとしか思えないよ。自分はまだしも、自分の親が、自分の子が、自分の友人が、自分の愛する人が、同じような目にあったら、同じようなことをしたら、どう思うのか、どう感じるのか、ということを常に考えて行動してみればいいのに。そんな想像すらできない人が多い気がしてならない。あなたはいつから、ごみを道端に捨てても、罪悪感がなくなったのですか? 「ちびまるこちゃん」から読み直せっ、って感じだな。 今さえよければ、今さえ幸せであればいい、と考えて行動した結果、人類がエデンから追放されたことを忘れてはならない。。こともないか。キリスト教じゃないし。でも、昔からこんなことをいわれているってことは、常に想像しろってことに他ならない、、のかもしれない。 おりしも、三田佳子の次男の3度目の事件。甘やかすような育て方をした三田佳子がいけないのか、いつまでも甘えた次男がいけないのかはわからない。そしてもし、自分の息子がああなってしまった時、どう接すればよいのかを考えると、ただただやるせなく悲しくなるね。
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