ある小さなスズメの記録

人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

クレア・キップス / 梨木 香歩

2010年11月11日

文藝春秋

1,571円(税込)

小説・エッセイ / 人文・思想・社会

第二次世界大戦中のロンドン郊外で、足と翼に障碍を持つ一羽の小スズメが老婦人に拾われた。婦人の献身的な愛情に包まれて育った小スズメは、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていくー。ヨーロッパやアメリカで空前の大ベストセラーとなった英国老婦人と小スズメの心の交流を描いたストーリーを、梨木香歩が完訳。

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Eugene

動物文学、そしてナチュラルヒストリー Ⅰ

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3.3 2020年07月16日

かなり乱雑に保管してある書籍群から、先週、数本動物文学のものが眼についた。 今回は、そこから一冊、そして今月書店から届いたものを含めて書いてみたい。  以前のもので引っ張り出したのは、 「ある小さなスズメの記録」 戦中の英国の女性の‘観察記録’に近い、謂わば動物行動学的要素の強いもの。観察記録的なところ的なものだ。 ただ、著者は、音楽を専門とした職業の方故(ゆえ)、主人公のイエスズメ‘クラレンス’の音楽的な能力を探る面も何割か占める。 さすがに、経験主義の国の国民だけあって、その面の観察と記録は冷静かつ理知的である。 内容は、当作品自体と、ウェブでの他の方のレヴューに譲るが、惹きつけるものが多い。 時代的には、スタートは第二次戦中の英本国、独軍の民間地爆撃中の最中(さなか)。 結局、’クラレンス‘は、12年余りの生涯で幕を閉じるのだが、僕の経験からすると、この時間、過ごした相棒の死亡というのは、作者の喪失感はかなりのものがあったろうと推察する。 訳書は、児童文学者のイメージの強い梨木香歩さん。この方については、別途、取り上げることもあると思うが、今回は作家論ではないので、省略する。  さて、このジャンル。 一口に‘動物文学’と総称する方も多いが、シートン(アーネスト・トンプソン)、フェーリクス・ザルテン、そして、ジャックロンドンなど、また、国内では、以前、紹介申し上げた 椋鳩十 氏もそのものズバリだし、梅崎春夫氏、戸川幸夫氏等、数え上げればかなりのご芳名が出てくるが、日本では、その草創、平岩米吉氏に話が及ぶ。 平岩氏の「動物文學」誌は、戦前から、2014年まで、[動物行動学を中心にした自然科学と、博物学、文学など、幅広い分野]を対象にしてあるだけあり、所謂(いわゆる)「動物文学」と一括(くく)りにできぬものがあり、やはり児童文学が多いとは言え、現在まで、学問的フォーラムとしての存在から日本での独特なジャンルを形成していると思う。 その意味からも、ここに挙げたクレア・キップスの作品もよりナチュラリスト的要素を持つものも勿論対象であり、この年初めに、取り上げた立花隆さんの「サル学の現在」もそのジャンルに入るだろう。 今日の表題については、「動物文学、そしてナチュラルヒストリーⅠ」という事にして終わる。Ⅱを待たれよ。 Eugene

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