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朝鮮通信使いま肇まる
荒山 徹
2011年5月31日
文藝春秋
1,833円(税込)
小説・エッセイ
日朝外交を長く担った「朝鮮通信使」。その知られざる奇譚を描き、両国関係の真の姿を白日の下にさらす問題作。
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(無題)
読書の楽しさをこんな形で再認識させてくれる本があったのですね。こんな形ってどんな形と聞かないでくださいね。それを言えば、手品の種明かしをしてしまうようなものですから。ブクレコでもレビューを書いている人がいませんから、自分だけの楽しみとしてとっておきたいくらいです。 さて、朝鮮通信使は江戸時代を舞台にした読み物にしばしば登場します。それは、多くは幕府にとって経済的出費をもたらす厄介な存在としてですね。僕はこの朝鮮通信使に何時も違和感を感じていました。どうしてかというと、辞書を引かないまでも通信の意味は「意思や状況を伝えること」である事は明らかですね。それが何故、李氏朝鮮が日本に派遣した外交使節団のことを通信使と呼んだのでしょうか。単純な疑問ですが、歴史の面白さは、こんな疑問を解き明かして行く中に人間の営みや政治が見えて来る事にあります。 朝鮮通信使は、実は江戸時代ばかりでなく室町時代に始まり、織豊、そして明治まで我が国を訪れていたんですね。それは何故なのか、ここで明かす訳にはいきません。ぜひ本書を読んでみてください。実は、朝鮮通信使が我が国を訪れたエピソードの中から、幾つかをピックアップして連作形式の短篇集に仕立てたのが本作なんです。 内容については、第一編だけチョット触れておきますね。日本の文化は、朝鮮半島経由でもたらされた中華文明が独自の変貌を遂げたものである事は、誰しも異論はないと思います。であるならば、半島の文化がどうであったか、誰しも興味が湧くところでしょう。ところが、半島にあっては、李氏朝鮮の時代、それまでの文化を徹底的に破壊しつくしてしまったのです。何故そんな事をしたのかも本書を読む楽しみのひとつなので、ご自分で発見してくださいね。長くなってしまいましたが、朝鮮の使節が日本の文化に初めて触れた時の驚きと羨望が初代通信使・朴瑞生の報告に鮮烈に記されています。後に世宗大王がハングル文字を開発するときに、日本のかな文字を念頭においたとするのが、第一編の最後に書かれています。
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