ナイルパーチの女子会

柚木 麻子

2015年3月28日

文藝春秋

1,650円(税込)

小説・エッセイ

丸の内の大手商社に勤めるやり手のキャリアウーマン・志村栄利子(30歳)。実家から早朝出勤をし、日々ハードな仕事に勤しむ彼女の密やかな楽しみは、同い年の人気主婦ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』を読むこと。決して焦らない「おひょう」独特の価値観と切り口で記される文章に、栄利子は癒されるのだ。その「おひょう」こと丸尾翔子は、スーパーの店長の夫と二人で気ままに暮らしているが、実は家族を捨て出て行った母親と、実家で傲慢なほど「自分からは何もしない」でいる父親について深い屈託を抱えていた。 偶然にも近所に住んでいた栄利子と翔子はある日カフェで出会う。同性の友達がいないという共通のコンプレックスもあって、二人は急速に親しくなってゆく。ブロガーと愛読者……そこから理想の友人関係が始まるように互いに思えたが、翔子が数日間ブログの更新をしなかったことが原因で、二人の関係は思わぬ方向へ進んでゆく……。 第28回山本周五郎賞受賞作。

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ひさだかおり

書店員@精文館書店中島新町店

(無題)

0
2020年01月16日

みんなのレビュー (2)

りりこ

まあまあ

starstarstar 3.0 2025年01月17日

友達に勧められた一冊。友達とか趣味とか依存先が少ない人に急に友達ができるとこういうことになるのかもなと怖かった。

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Readeeユーザー

(無題)

2018年01月19日

ナイルパーチは大型の淡水魚で、癖がない白身であることから、食用として重宝されている。レストランや給食などで出される「白身魚」のフライはナイルパーチが用いられる事が多い。また、ナイルパーチの繁殖率は旺盛で、放流された湖で多数の淡水魚が絶滅し、生態系に深刻な影響を与える事が心配されている。 在来種を食い荒らし、絶滅に追い込む凶暴な魚・ナイルパーチに擬されるのは、キャリアウーマンの栄利子と、マイペースで毎日を過ごす専業主婦の翔子である。本書はこの2人を巡る日常を描く中で、現代の人間関係に迫る小説と言ったところだろうか。 ところで、クリスマスケーキ、恵方巻き、バレンタインのチョコレート、これらに共通するのは何か、ご存知であろうか。すでに日本の風物詩に定着した感のある食品であるが、これらは皆、食品メーカーが自社商品の売り上げアップを狙って作り出した行事である。ケーキは不二家、恵方巻きは海苔協会が仕掛けたイベントである。周りがやるからと、同調する日本人の付和雷同性に腹立たしさを覚えるのは、私だけではないだろう。女子会の言葉の響きにも同様の違和感を覚える。かつてはおじさんのものであった居酒屋が、新たな顧客獲得を目指して打ち出した女子会におばさんまでがノリノリなのは如何なものか。 下ネタや悪口など男性がいると話しにくいことでも女性だけだとストレートに話せる事が、女子会の一番の効能であろう。しかし、女性の会話を聞くとはなしに聞いてると、お互いに言いたい事を一方的に喋っているだけで、コミュニケーションが成り立っているのか疑問に思う事も無きにしも非ずである。男であれば「それだったら1人でいれば良いのに」と思うところだが、女はそれでも群れたがる。 志村栄利子の密かな楽しみは、同い年の主婦が綴る人気ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』を読むことである。ダメ奥さんと自称するだけあって、翔子の主婦業は手抜きだらけである。食事の用意はスーパーのお惣菜、掃除洗濯は気が向いた時だけ、それを条件に結婚した夫と二人暮らし。完全武装のバリバリキャリアウーマンの栄利子には、その肩の力の抜け具合やコンビニのジャンクフードに詳しいところも限りなく魅力的に映る。このように学歴も職業も育ってきた環境も違う二人だが、ブログを介してリアルな友人関係が成立するところとなる。そして、ここからはさしずめナイルパーチの喰い合いならぬ、凄まじいバトルが展開されるのだ。 ナイルパーチは巨大ゆえにその個体を維持するために、旺盛な食欲を示す。本来の生態系の中にあれば、なんら問題がなかったにも拘らず、人間が食料確保のために環境も考えずに放流したところから生じた問題である。ナイルパーチには罪はないのである。同様に栄利子も翔子もある意味、家庭環境の犠牲者といえる。2人に共通して見られるのは、明らかに強迫性障害である。

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