ナイルパーチの女子会

柚木 麻子

2015年3月28日

文藝春秋

1,650円(税込)

小説・エッセイ

ブログがきっかけで偶然出会った大手商社につとめる栄利子と専業主婦の翔子。互いによい友達になれそうと思ったふたりだったが、あることが原因でその関係は思いもよらぬ方向にー。女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。

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ひさだかおり

書店員@精文館書店中島新町店

(無題)

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0
2020年01月16日

みんなのレビュー (1)

Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月19日

ナイルパーチは大型の淡水魚で、癖がない白身であることから、食用として重宝されている。レストランや給食などで出される「白身魚」のフライはナイルパーチが用いられる事が多い。また、ナイルパーチの繁殖率は旺盛で、放流された湖で多数の淡水魚が絶滅し、生態系に深刻な影響を与える事が心配されている。 在来種を食い荒らし、絶滅に追い込む凶暴な魚・ナイルパーチに擬されるのは、キャリアウーマンの栄利子と、マイペースで毎日を過ごす専業主婦の翔子である。本書はこの2人を巡る日常を描く中で、現代の人間関係に迫る小説と言ったところだろうか。 ところで、クリスマスケーキ、恵方巻き、バレンタインのチョコレート、これらに共通するのは何か、ご存知であろうか。すでに日本の風物詩に定着した感のある食品であるが、これらは皆、食品メーカーが自社商品の売り上げアップを狙って作り出した行事である。ケーキは不二家、恵方巻きは海苔協会が仕掛けたイベントである。周りがやるからと、同調する日本人の付和雷同性に腹立たしさを覚えるのは、私だけではないだろう。女子会の言葉の響きにも同様の違和感を覚える。かつてはおじさんのものであった居酒屋が、新たな顧客獲得を目指して打ち出した女子会におばさんまでがノリノリなのは如何なものか。 下ネタや悪口など男性がいると話しにくいことでも女性だけだとストレートに話せる事が、女子会の一番の効能であろう。しかし、女性の会話を聞くとはなしに聞いてると、お互いに言いたい事を一方的に喋っているだけで、コミュニケーションが成り立っているのか疑問に思う事も無きにしも非ずである。男であれば「それだったら1人でいれば良いのに」と思うところだが、女はそれでも群れたがる。 志村栄利子の密かな楽しみは、同い年の主婦が綴る人気ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』を読むことである。ダメ奥さんと自称するだけあって、翔子の主婦業は手抜きだらけである。食事の用意はスーパーのお惣菜、掃除洗濯は気が向いた時だけ、それを条件に結婚した夫と二人暮らし。完全武装のバリバリキャリアウーマンの栄利子には、その肩の力の抜け具合やコンビニのジャンクフードに詳しいところも限りなく魅力的に映る。このように学歴も職業も育ってきた環境も違う二人だが、ブログを介してリアルな友人関係が成立するところとなる。そして、ここからはさしずめナイルパーチの喰い合いならぬ、凄まじいバトルが展開されるのだ。 ナイルパーチは巨大ゆえにその個体を維持するために、旺盛な食欲を示す。本来の生態系の中にあれば、なんら問題がなかったにも拘らず、人間が食料確保のために環境も考えずに放流したところから生じた問題である。ナイルパーチには罪はないのである。同様に栄利子も翔子もある意味、家庭環境の犠牲者といえる。2人に共通して見られるのは、明らかに強迫性障害である。

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