羊と鋼の森
宮下 奈都
2015年9月11日
文藝春秋
1,650円(税込)
小説・エッセイ
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
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starstarstarstar 4.0 2020年08月25日
高校生の外村は学校の体育館に調律に来た板鳥に出会う。触れた瞬間に叫び声をあげたくなるような心の動き。この調律が彼の人生の標となる。
全ての努力に無駄なものはない。ただ努力をしようと思って努力をすると見返りを求めるから小さくなる。意識せずにたゆまぬ努力を続ける事。ただあきらめなければどこまでも行けるわけではないことは知っている。「まっとうに育ってきた素直な人」が、鋼と羊の森を手探りで、ただし着実に前に進んでゆく、美しい音に導かれて。調律師外村、
ピアニスト和音それぞれのbreakthroughが読んでいて心地よい。
大切なのは、いつも自分に「これでいいのか?」と問い続ける事。スタインウェイの最終調整者も言っていた良き言葉を思い出す。
「才能っていうのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。」(p.125)
「才能とか、素質とか、考えたって仕方がない。ただ、やるだけ。」(p.224)
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えている様でありながら、厳しく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実の様にたしかな文体(原民喜)」
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調律師という仕事の奥深さを感じられる本
starstarstarstar 4.0 2020年07月26日
主人公の外村は、自分の中に原風景(森)をもっており、
高校の体育館にピアノの調律に来た江藤楽器の板鳥の調律に、それを感じて衝撃を受ける。
人生を変えるほどの衝撃というと、一生に何度かあるかもしれないが、その衝撃をきっかけに新しい一歩を踏み出すことは、かなりの勇気がいる。
飄々としてした印象の外村だが、自分の感覚に正直に一歩を踏み出せる強さを備えていることが、序盤でわかった。
調律の専門学校卒業後は、地元北海道の江藤楽器に調律師として就職する。
そこで働く3人の調律師、柳、秋野、板鳥に調律について技術や奥深さについて学ぶ中で成長していく。
お得意様の双子の姉妹は、外村のフィルターを通して語られるが、すごく魅力的。外村フィルターのせいかもしれないが、そこはやはり宮下奈都さんの表現力のなせる技だと思う。
文章が綺麗でとっかかりにくいかとも思ったが、全然そんなことはなく、すいすい読み進めることができた。
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(無題)
starstarstar 3.5 2019年04月28日
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「羊と鋼の森」と聞いてピアノや調律師を思い浮かべる人はまずいないだろう。ピアノは、鋼でできたピアノ線を羊毛から作ったフエルトで覆ったハンマーで叩いて音を出す楽器であるから、説明を聞けばある程度の納得は得られる。ところが、ピアノという楽器が奏でる音に、森の匂いを感じる感性は極めて希と言わざるを得ない。本編の主人公・外村は調律師・板鳥のピアノの音を聴いて森の匂いを思い起こしたのだった。なぜピアノの音と森の匂いが結びつくのか?。板鳥のピアノの音は、外村に森の中で自然を友として遊びまわっていた時の気分を呼び覚ましたからであった。それは、一言で言えば「自由」と呼ばれるものであった。こうして外村の調律師を目指す人生が開始された。
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(無題)
素朴だけど、すらすら読めてしまう 出てくる人物がみんなそれぞれ個性があり魅力的で、関わり方が面白い。蜜蜂と雷鳴の後に読んだからさらに、この調律師の話に夢中になれた。
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