合成生物学の衝撃

須田 桃子

2018年4月13日

文藝春秋

1,650円(税込)

科学・技術

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chacha

ゲノム

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3.1 2020年06月30日

第一章 MITを中心とした生物学を工学化するプロジェクト 第二章 MITとは別の、グレイグ・ベンターを中心とするヒトゲノム解読~人口生命体ミニマム・セルのプロジェクト 第三章 遺伝子操作技術の進歩。ランダム性の高いプラスミドを利用した方法→狙い通り改変できるが高コストのゲノム編集→高精度、高効率、低コストのcrispr-cas9。 第四章 ソ連による生物兵器の開発について、亡命した研究者の回想。 自然界の病原菌を兵器化する第1世代、病原性を強化した最近やウイルスを作製する第2世代。 ソ連崩壊後、エリツィンが開発を認め、関連施設への立ち入りを許可するも果たされず、プーチンは防衛目的の開発だったと主張し、許可を取り消し。 第3世代の研究が進められている可能性。 第五章 ペンタゴン関連機関DARPAによる合成生物学研究への投資。 テロの活発化を踏まえ、生物兵器対策の必要性。 ただし、防衛を可能にすることは、とりもなおさず攻撃への転用も可能ということ。 第五章 DARPAオフィスでの取材。 研究の真の目的、機密研究はあるのか。 合成生物学という専門分野について、よくまとめられている。 中盤以降、比重が「遺伝子研究に対する倫理的な問題」というありがちなテーマに置かれ、デュアルユースの観点から、「軍事利用されうる」「人間の尊厳が守られるのか」という強い懸念が通底している。 無論、そのような可能性はあるし議論もされるべきものではあるが、蓋然性が認められるデータを示すわけでもなく、可能性の問題だけで主張をしているのは残念だった。 (強い主張ではなく、疑問を投げかける形ではあるが、明確な主張が読み取れる) ジャーナリストによる著書なので、もう少しニュートラルに、ある種淡々と記述してほしいと個人的には感じる。 最後「宗教を持たないから、神が許すだろうかとは考えないが、母なる地球に暮らす一生物である人間に、生物を創造する権利があるのだろうか」という旨の記述で締め括っている。 神を信仰していないだけで、それも1つの宗教だろうと思う。 一見、自然な有り方を大切にしているように見えるが、自然には権利という概念はない。むしろ、盗む殺す傷つけるといったあらゆる権利が無制限にある。 自分自身、こうした研究の倫理的問題に確固たる意見を持っているわけではないが、こうした考え抜かれていない浅い主張には、ジャーナリストとしての底の浅さも知れると思えてならない。

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