
習近平の密約
文春新書
加藤 隆則
2013年4月20日
文藝春秋
880円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
中国共産党第18回大会で、胡錦濤が総書記と軍中央委員会主席を退き、習近平が党・軍権力の継承を受けた。習近平は習仲勲元副首相を父に持つ。抗日戦争と国民党との内戦に打ち勝った、毛沢東率いる共産党高級幹部の子弟グループ「太子党」を権力基盤とする。幹部養成機関の共産主義青年団(共青団)から権力の階段を一歩一歩進んだ胡錦濤が、サラリーマン社長だとすれば、習は、危機を救うため創業者一族が切り札として担ぎ出した2代目社長に当たる。 だが、江沢民、胡錦濤の歴代総書記による長老支配は依然残っており、三つ巴の権力構造が確定した。今後の政権運営には、習、江、胡の3者間で大枠の合意事項が形成されていると思われる。中央政界ではそれを「中南海の密約」と言う。本書は、密約の中身を解き明かすことによって、中国の今後を読み解こうとする試みである。 対外的にはアジア重視戦略に傾いた米国との主導権争いや東シナ海、南シナ海を巡る領土紛争、国内では、政治・経済改革の停滞が招いた不平等な分配や腐敗問題が深刻化し、一刻の猶予もない危機の時代を迎えてはいるが、政治の中枢である中南海の内幕は、各派閥が既得権益擁護の死守を目指して権力闘争に明け暮れている。 新たに発足した最高指導部に対し、中国国民の間には、新政権に対する刷新の期待よりも、コップの中の騒ぎに白けた失望感が漂う。一方、尖閣諸島の国有化で緊張化した日中関係の中、毛沢東の強国路線をDNAに持った習近平体制の発足は、日本にとっても大きな関心事である。 読売新聞中国総局長である加藤隆則氏とその右腕の竹内誠一郎氏が、中国政治の舞台裏を明らかにする。
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(無題)
中国政権内の権力争いについて、具体的な現象を元に説明している。しかもそれが、習近平総書記誕生に至る江沢民と胡錦濤を交えた三つ巴だというのだから、驚いてしまう。江沢民はいかに国家主席であったとはいえ、引退してから既に10年も経っているし、年齢も90歳に近いはずだ。そんな人物が未だに影響力を堅持している事も驚愕であるが、そんな年齢になっても尽きない権力欲とは、と考えさせられてしまう。 さて、習近平の権力基盤は江沢民派であることだ。しかし、江沢民派も胡錦濤に切り崩されてひところほどの力を持たない。江沢民もすでに老齢である。確かに常務委員の七人のうち、五人が江沢民派だが、すべて五年後には定年で退くことが決まっており、次の常務委員の候補はたぶん胡錦濤派が主体になるだろうと見られる。だから習近平は今のところ江沢民にすり寄っているが、力を蓄えたら豹変するかもしれない。 中国社会には「潜規則」 (見えないルール)があるそうだ。中国の権力闘争は熾烈を極める。弱者は生命の危険にもさらされる。だが、強大な権力を持つ者同士は、どこまで戦えばよいのか、超えてはならない一線があることも、お互いが了解している。正面からぶつかり合えば、その反作用として自分に跳ね返ってくるからだ。これが潜規則だ。 ところで習近平の密約とは何を指すのかということだが、事は江沢民から胡錦濤への権力移譲時に遡る。中央軍事委員会主席の座に止まった江沢民が04年9月、同主席の座を胡錦濤に渡す全面引退の際には「重要事項は江沢民に相談する」との密約合意を成立させた。胡錦濤はこの密約に縛られた。今回も習近平と江沢民、胡錦濤との間で密約が結ばれただろうということだ。
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