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習近平の密約
文春新書
加藤 隆則
2013年4月20日
文藝春秋
880円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
習近平総書記は、今年三月の全人代で国家主席に選出され、名実ともに権力の頂点に立った。江沢民、胡錦涛ら長老の圧力にどう対抗し、尖閣問題で悪化した中日関係をいかに導くのかー。新政権の深部をえぐる。
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(無題)
中国政権内の権力争いについて、具体的な現象を元に説明している。しかもそれが、習近平総書記誕生に至る江沢民と胡錦濤を交えた三つ巴だというのだから、驚いてしまう。江沢民はいかに国家主席であったとはいえ、引退してから既に10年も経っているし、年齢も90歳に近いはずだ。そんな人物が未だに影響力を堅持している事も驚愕であるが、そんな年齢になっても尽きない権力欲とは、と考えさせられてしまう。 さて、習近平の権力基盤は江沢民派であることだ。しかし、江沢民派も胡錦濤に切り崩されてひところほどの力を持たない。江沢民もすでに老齢である。確かに常務委員の七人のうち、五人が江沢民派だが、すべて五年後には定年で退くことが決まっており、次の常務委員の候補はたぶん胡錦濤派が主体になるだろうと見られる。だから習近平は今のところ江沢民にすり寄っているが、力を蓄えたら豹変するかもしれない。 中国社会には「潜規則」 (見えないルール)があるそうだ。中国の権力闘争は熾烈を極める。弱者は生命の危険にもさらされる。だが、強大な権力を持つ者同士は、どこまで戦えばよいのか、超えてはならない一線があることも、お互いが了解している。正面からぶつかり合えば、その反作用として自分に跳ね返ってくるからだ。これが潜規則だ。 ところで習近平の密約とは何を指すのかということだが、事は江沢民から胡錦濤への権力移譲時に遡る。中央軍事委員会主席の座に止まった江沢民が04年9月、同主席の座を胡錦濤に渡す全面引退の際には「重要事項は江沢民に相談する」との密約合意を成立させた。胡錦濤はこの密約に縛られた。今回も習近平と江沢民、胡錦濤との間で密約が結ばれただろうということだ。
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