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国境の日本史
文春新書
武光 誠
2013年9月20日
文藝春秋
847円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
日本はいかにして「日本」になっていったのか?神話の時代から植民地で領土を拡大した近代まで、「辺境」は様々な物語に満ちている。国境の歴史から浮かび上がる竹島、尖閣問題の起源と日本の特殊性。
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政府は北方領土を我が国固有の領土と言い表しますが、これは国内向けのリップサービスであって国際的には何の意味も持たない、むしろ国境は時代ととも変更されて来ているのが実態である、これが著者の考え方で、本書は古代から我が国の歴史を遡って国境を見据えています。非常に大雑把な捉え方ですが、随所に著者の歴史観が垣間見られ、大変に面白い読み物に仕上がっています。例えば古代の我が国と朝鮮半島との人的交流について著者は、倭の勢力が伸長した四世紀に倭から朝鮮半島に渡った集団が、倭が後退した五世紀末以降に日本に戻って来て、「渡来人」になったのではないか、と言うんです。これなら嫌韓の人にも受け入れやすいですね。 領土問題となると、民族意識が刺激されて誰しもが熱くなるのが一般的ですが、本書で著者は縄文時代の日本とはどこまでか、古事記や日本書紀の日本とはどこかといった話から、現代の北方領土、竹島、尖閣諸島まで、国境や辺境にまつわるエピソードを次から次と繰り出すとともに、その歴史的経緯も冷静に示しています。領土に関わることであれば、南洋諸島や南極も無視せず、日本とのかかわりをあきらかにしています。 著者は博識ですし、とかくナショナリズムに陥りがちな微妙なテーマにも淡々と事実を述べる態度は好感が持てます。例えば戦前の領土拡大、朝鮮半島と台湾の併合について、植民地経営は上手く行っていたのかというと、経済的利益は必ずしも十分ではなかった、とのみ述べている姿勢が印象に残りました。ですから、著者は現在の領土問題に一定の方向性は示すものの、論争それ自体に立ち入って声高に主張することはありません。抑揚が効いていて、気持ち良く読み進めることができます。
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