独裁者に原爆を売る男たち 核の世界地図

文春新書

会川 晴之

2013年10月18日

文藝春秋

979円(税込)

旅行・留学・アウトドア / ホビー・スポーツ・美術 / 科学・技術 / 新書

北朝鮮、リビア、イラン…「原爆の父」天才・カーン博士の築いた「核の闇市場」はいかにして核を売りさばいたのか?CIAをも驚愕させたほど多くの国が関与した「世界で最も危険な組織」の正体を追う。

本棚に登録&レビュー

みんなの評価(1

starstarstar 3

読みたい

0

未読

1

読書中

0

既読

2

未指定

1

書店員レビュー(0)
書店員レビュー一覧

みんなのレビュー (1)

Readeeユーザー

(無題)

starstarstar 3.0 2018年01月27日

世界中探しても原爆の闇市場に詳しい男なんて、いるわけがありません。第一、闇市場自体が存在すらのかどうかすらが、疑問です。ただ、時すらパキスタン原爆の父、カーン博士の名前が原爆絡みの国際ニュースに登場する程度で、その時は何やらきな臭い雰囲気が漂ってきたものでした。ですから、本書は原爆の闇市場を扱った本としては、多分唯一で類書は寡聞にして聞きません。筆者は現在、毎日新聞の編集委員で、IAEAの本部があるウィーン特派員や欧州総局長時代に原爆に関する執拗な取材を繰り返しました。ところが、原爆はどの国にあっても軍事機密ですので、その実態を知ることは極めて困難です。それでも人間の知りたいと思う欲望というか、記者靈というか、一冊の本を上梓するまでに情報を収集したのですから、拍手を送らざるを得ません。 本書は、北朝鮮の記述に多くが割かれており、その視点が北朝鮮寄りなのに驚かれる読者も多いことでしょう。それは、北朝鮮が世界の中で核開発も含めた大量破壊兵器拡散の中心になっているからです。また、本書ほど北朝鮮の核開発について、横断的かつ系統的に書かれたものはありません。私たちの北朝鮮に対する印象から言えば、挑発的でどうしようもない「ならず者国家」像が定着していますが、北朝鮮にとってみれば数あるカードの中であえて挑発的カードを切っているのではなく、国際社会で国益を考えれば唯一切れるカードを切っているに過ぎないことがわかります。もっと言えば、アメリカの外交戦術の失敗に過ぎないのです。 さて、前置きが長くなりましたが、核の闇市場は、パキスタンのカーン博士が作った組織です。この組織は純粋な金儲けのために核技術や周辺機器の売買を行ったのですから、人類の将来に対する悪魔的犯罪者と言えましょう。本書は、その「核の闇市場」の成り立ちから2003年12月に崩壊するまでの歴史、その顧客である独裁国家の情勢に追ったものです。この間、カーン博士を中心とする主要メンバーの世界を股にかけた暗躍と米国CIAや英国M-6とのやりとりは、当にスパイ映画もどきのスリルがあります。 最後に我が国の核問題について触れておきましょう。と言うのは、我が国の核武装を真剣に考える勢力が広い範囲に存在するようになってきたからです。核兵器が開発されて70年、今や我が国の技術水準であれば、原爆の製造は理科系の大学生でも可能と巷間伝えられます。本書を読む限りにおいては、そこには誇張があるように感じられます。しかしながら、我が国の技術水準の高さとプルトニウムの保有量は、いつでも核武装出来るところにあり、現に政府の有力者は、そのことが抑止力として働いていると言及しています。私には、危ない方向に向かっているように思えてなりません。

全部を表示
Google Play で手に入れよう
Google Play で手に入れよう
キーワードは1文字以上で検索してください