若き実力者たち

正直に言うと、この本の感想について書きあぐねている。 大好きな沢木耕太郎先生の、まだデビューして間もない20代中盤の頃の連載をまとめたものであり、今となっては伝説的となったような人物の1970年代までを切り取った鮮烈なルポルタージュである。 存じ上げない方も何人かいたが、それぞれ読み応えのある文章の連続だった。 あとがきで著者はこの連載を“人生紀行”と称した。 ほんのタイトルに違わぬ「若き実力者たち」の人生を詳らかにして、その人生の旅の道程を紀行文とするのは、シンプルながらピタッとフィットする。 しかし僕には、この実力者たちの熱を見事に投影した文章に、紀行文では些かあっさりしすぎではないかと思う。 それは文章ジャンルには収まらないような、強いて言うなら彼らの“叫び”のようなものではないだろうか。 しかし、沢木先生の「人生紀行」という言葉をあとがきで目にした時。 まさにその通り！と納得したのもまた事実なのである。 本人達にとっては、紆余曲折はありながらも、あくまでそれは過ぎ去りし旅程なのか。はたまたその熱に当てられて、熱くなっているのは読者のこちらだけなのか。 先達の偉大さとは、かくも大きなものなのか。

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