さんだらぼっち
文春文庫
宇江佐 真理
2005年2月10日
文藝春秋
682円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
芸者をやめたお文は、伊三次の長屋で念願の女房暮らしを始めるが、どこか気持ちが心許ない。そんな時、顔見知りの子供が犠牲になるむごい事件が起きてー。掏摸の直次郎は足を洗い、伊三次には弟子が出来る。そしてお文の中にも新しい命が。江戸の季節とともに人の生活も遷り変わる、人気捕物帖シリーズ第四弾。
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(無題)
火事で焼け出されたお文が伊三次の長屋で暮らし始めて一月になりました。お文もだいぶ長屋暮らしになれてきたようです。そうは言っても、女中付きの芸者暮らしからの突然の長屋住まいです。おさんどんができるわけがありません。そこは下町の裏店住まいの良いところ、近所のおかみさん連中がほおっておかないんですね。お文が何もしなくとも、生活は回って行ってしまうのです。 寝静まった裏店に子供の泣き声が聞こえてきます。長屋のお須賀の娘・お千代です。癇の強い子供で夜泣きが多いのです。そのたびにお須賀が折檻するのをお文はたまらなく思います。裏店暮らしのお文の楽しみの一つは木戸番の女房・おつると世間話をすることです。この駄菓子を売っているおつるの木戸番に武家の親娘連れが買い物にやってきました。娘の名は早苗といいました。子煩悩な父親とは正反対に妻は、屋敷の若党と密通し我が子を顧みませんでした。その結果、愛娘が母親に殺されるという悲劇となってしまったのです。お文はそんな娘を不憫におもい、同じように娘を折檻するお須賀に我慢出来ません。ある時子供に灸を据えようとするお須賀の手から線香を奪うとそれをお須賀の頬に押し付けたのでした。しかし、この事でお文は長屋に居づらくなります。 こうして、伊三次は佐内町の仕舞屋に引越して、お文と一緒に暮らすことになりました。そんなおり、近所の九兵衛という子供が弟子になりたいと言い出したのでした。新たな展開を見せる伊三次とお文の周囲であります。おみつは流産する一方、お文は懐妊。それを巡る確執、全編やるせないお話です。
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