輪違屋糸里 上
文春文庫
浅田 次郎
2007年3月9日
文藝春秋
693円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
文久三年八月。「みぶろ」と呼ばれる壬生浪士組は、近藤勇ら試衛館派と、芹沢鴨の水戸派の対立を深めていた。土方歳三を慕う島原の芸妓・糸里は、姉のような存在である輪違屋の音羽太夫を芹沢に殺され、浪士たちの内部抗争に巻き込まれていく。「壬生義士伝」に続き、新選組の“闇”=芹沢鴨暗殺事件の謎に迫る心理サスペンス。
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starstarstar 3.0 2021年07月10日
芹沢暗殺までの顛末を輪違屋の芸妓・糸里、八木家、前川家の妻女、菱屋のお梅など女たちの視点から描いている。だからかもしれないけれども(作為的に?)、おなじみの試衛館の面々もちょっとイメージが違うように思う。 本作でも『壬生義士伝』で用いられた独り語りの技巧が使われているのだが、地の文(オーソドックスな三人称の語り)が突然途切れて、長々と人物の長広舌が始まっていたりして実に収まりが悪い。映画に例えて云うなら、やたら長いフラッシュバックが突然始まって、本筋に戻ったときにはすでに話の流れを忘れている、というような居心地の悪さを覚える。 『壬生義士伝』では「巧い」と思わせた技巧も、まるで自分の作品を模倣(パスティーシュ)するかのように再利用されると、ものすご~く狡智が鼻につく感じ。才に溺る。
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芹沢暗殺までの顛末を輪違屋の芸妓・糸里、八木家、前川家の妻女、菱屋のお梅など女たちの視点から描いている。だからかもしれないけれども(作為的に?)、おなじみの試衛館の面々もちょっとイメージが違うように思う。 本作でも『壬生義士伝』で用いられた独り語りの技巧が使われているのだが、地の文(オーソドックスな三人称の語り)が突然途切れて、長々と人物の長広舌が始まっていたりして実に収まりが悪い。映画に例えて云うなら、やたら長いフラッシュバックが突然始まって、本筋に戻ったときにはすでに話の流れを忘れている、というような居心地の悪さを覚える。 『壬生義士伝』では「巧い」と思わせた技巧も、まるで自分の作品を模倣(パスティーシュ)するかのように再利用されると、ものすご~く狡智が鼻につく感じ。才に溺る。
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