ボーダー ヒート アイランド4
文春文庫
垣根 涼介
2013年1月4日
文藝春秋
770円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
渋谷のチーム「雅」を解散して3年。カオルは東大生となり、アキは裏金強奪のプロとしてそれぞれ別の道を歩み始めていた。ところが、ファイトパーティを模したイベントを見たという級友の話を聞き、カオルは愕然とする。あろうことか主催者は「雅」の名を騙っていたのだ。過去の発覚を恐れたカオルはアキに接触するが…。
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(無題)
嬉しいことに、ずっと気になっていたカオルのその後が明らかになった。雅を解散してアキと別れてから、カオルは半年間の受験勉強を経て東大生となっていた。僕にとってはこれは、予想通りの展開と言える。さらにカオルが表の世界で日本の指導者に、アキが裏社会のフィクサーとなって日本を動かすなんて物語も将来的にはアリかもしれない。 東大駒場キャンパスと言ったら、アキとカオルがヴィヴィ言わせていた街・渋谷とは井の頭線で二駅、指呼の間といって良い。カオルのキャンパスライフは勉学第一、かつて渋谷で100人からのストリートチルドレンを束ねる〝雅”のサブを務めていたことなど、おくびにも出さない地味なものだった。しかし、類は友を呼ぶというか、カオルの仮面の下の顔を伺う男が現れた。クラスメートの中西である。本作では、この中西が重要な役割を担う事になる。さらには好奇心旺盛でトンデル美女が登場する。中西の義理の妹・アキラである。 ところで、第1作「ヒートアイランド」で描かれた事件は、暴力団同士の抗争ということで世間的には決着がついているのであるが、アキラの意表を突いた動きで真相が明るみに出るおそれが生じた。カオル、アキ、そして柿沢・桃井の裏金強奪団にまで司直の手が及ぶ可能性が出てきたのだ。これを恐れた柿沢と桃井は、彼ら2人が主導して火消に走るのだった。真相に迫りつつあった中西とアキラを殺して口封じするのが最もシンプルで確実な方法である。柿沢は秘密を守るために、こちら側の人間を殺害するのか、この辺が一番の緊迫感で読者をハラハラさせるシーンである。 柿沢も桃井も出来れば殺さないで済ませようと考えている。アキもましてやカオルも。いや、誰よりも避けたいと望むのは、読者であった。土壇場のギリギリで力を発揮したのは、戦闘能力でも胆力でもなかった。中西の頭脳力が物を言ったのだ。こうして最悪の事態は回避された。 最後には、柿沢と桃井は暴力団と、アキとカオルはニセ雅と渡り合って、読者は大いに溜飲を下げるのであるが、一方で登場人物たちは、過去の自分と決別を迫られるいう切ない一面もある。中西は、父親をめぐる悲惨な過去に決着をつける。そして、闇の世界に戻るアキと、表の世界に踏み出したカオルとの「境界線」が明確に引かれるのである。その境界線は大人の世界と青春時代とのボーダーラインでもあった。
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(無題)
安定の面白さ。 でも、こんなにいろんな人に顔晒したりして大丈夫なのかしらと思う。
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