プラナリア
文春文庫
山本 文緒
2005年9月2日
文藝春秋
726円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
どうして私はこんなにひねくれているんだろうー。乳がんの手術以来、何もかも面倒くさく「社会復帰」に興味が持てない25歳の春香。恋人の神経を逆撫でし、親に八つ当たりをし、バイトを無断欠勤する自分に疲れ果てるが、出口は見えない。現代の“無職”をめぐる心模様を描いて共感を呼んだベストセラー短編集。直木賞受賞作品。
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(無題)
短編5編。 プラナリア 若くして乳癌になった春香は、手術後も薬の副作用に苦しんでいる。彼女はプラナリアになりたい、切っても死なない分裂できるプラナリアに、と願う。 手術はもう終えているのに自虐的に乳癌の話ばかりする春香を恋人の豹介は咎める。無職の春香は入院中憧れの人だった永瀬さんの甘納豆屋さんで働き始めるが、永瀬さんもどこかずれている。 彼女は春香に乳癌の専門書とプラナリアの資料を送る。永瀬さんの思い込みに春香はうんざりし、バイトを無断欠勤する。 春香もわがままだし永瀬さんもずれていると思う。乳房を切り取った春香が「プラナリアになりたい」と切実に思うのは乳癌以後決定的に変わってしまった自分の人生をどうにか好転させたいという深層意識の現れか。
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(無題)
無職の女性をめぐる5編の短編が収められている。各編に登場する女性主人公は、世間の常識から見れば一風変わっている。自分が世間並みでないことを自覚していたり、あるいは天然であったり、それぞれだが、何かしらの生きづらさを抱えているところは共通している。 とりわけそれがはっきりと出ているのが、表題作「プラナリア」である。生きることには既に絶望している春奈であったが、かと言って自ら命を絶つほどのエレルギーは持ちあわせていない。だから、何もかもが面倒臭いし、世間と上手に折り合いをつけたいとも思わない。いや、むしろ拗ねて見せることで顰蹙をかうことに生きがいを見出しているほどだ。24歳で乳がんになった春奈が飲み会でことさら、乳がんを話題にして場を白けさせるのは、そんな自分を意識しているからだ。20代の現代女性に「生きる意味を問う」などといった大時代的な物言いは似合わない。この作品で著者は、屈折を抱える現代女性の日常を描くことで、居場所を懸命に探す現代人の心を白日のもとにさらしたのだった。 最後の「あいあるあした」は、5編の中でも少しばかり肌触りが異なる。無論、無職の女性が登場するのは他の作品と同様である。ところがこの作品は、無職の女性ではなく、居酒屋の主人の視点から物語が語られるところからまず違っている。無職というよりフーテンといった方が、より実態に近いよし江は、居場所を求めてドロップアウトしたにも関わらず、屈折を感じさせない。自由奔放で無邪気なよし江と、よし江に次第に惹かれていく居酒屋の主人が作り出す世界は、他の4編と趣が異なって、暖かく将来に希望の火が見える。とりわけ、昭和の匂いを背中に漂わせている中年男性の居酒屋の主人は、いかにも居そうな人物で、見事に活写されている。
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粟田 淳
(無題)
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