風に舞いあがるビニールシート
文春文庫
森絵都
2009年4月10日
文藝春秋
803円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
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ゆいが借りてきてたから読んだ。 森絵都さんの直木賞受賞作。 6つの短編集。なんの共通点があるのか考えながら読んでたのだけどもなかなか見つからなかった。なにかにのめり込んでいる人…?なのかな 何かにのめり込みすぎる人間を、ただありのまま描いているのかなと思った。のめり込むということはすなわち何かを犠牲にしているということで、その歪みも含めて描写しているのかと。ただ、現実味がない話もあったし、野球の話はのめり込んでるわけでもないし、どうなのだろう。 ※裏表紙によると「自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編」 ●器を探して 主人公弥生は、ヒロミのケーキに心酔している。自らも専門学校出身で、ケーキを作る腕はあるのに、ヒロミのケーキを世に届けるため、事務方に徹して働いていた。弥生は、恋人とのクリスマスデート(しかもプロポーズされる予感があった)を蹴ってまで、プリンをのせる器を探しにいく。 ヒロミは天才ながらも気分屋で、ヒロミも、弥生の恋人も、弥生の一生懸命さを理解できておらず戸惑っているところがある。 ここまで夢中になれるのなら幸せなのかどうか、考えさせられる。 この先どうなるのかは書かれていないけれど、おそらくヒロミはそのうちマスコミに潰されるだろうし恋人も離れていってしまうだろう。そのとき弥生は何を生きがいとするのだろう。 ●犬の散歩 どこにでもいる主婦であった恵利子は、捨て犬の世話をするボランティアに情熱を注ぎ、費用を稼ぐために水商売まではじめる。 ●守護神 大学の夜間部でまことしやかに囁かれる、レポートの代筆の達人、「ニシナミユキ」の噂。主人公祐介はニシナミユキ探しに奔走する。 ここまで過酷な環境下で学問と純粋に向き合える人はいないだろうなと思ってしまったので、この話は合わないなーと思った ●鐘の音 潔は、25年前まで、仏像修復師であった。彼は昔の職場を訪れ、かつての同僚・吾郎と言葉を交わす。25年前、潔は不空羂索観音の修復に取り組むなかで、師匠松浦との不仲を決定的なものにした。 ただし、このことが修復師を辞めるにいたった理由ではない。潔の仏像への入れ上げ方は凄まじいものだったが、潔は仏像修復後、出発の日に誤って仏像の小指を折ってしまう。松浦に半殺しにされる恐怖と、恋人が待つ家へ早く帰りたいという思いから、彼は吾郎に協力してもらい小指をボンドでくっつけてしまう。(本物の修復に使うのは漆) 彼はなによりも自分自身に絶望し、仕事をやめてしまったのだ。 だが、このあと潔は子を育て、幸せな家庭を築くというのが興味深い。ワークライフバランス、というが、仕事と生活をどう天秤にかけるのか、どうすれば幸せになれるのか、は永遠の課題だと思う。 ●ジェネレーションX 顧客に謝罪するため、顧客の家に車で向かっている石津と健一。石津は途中、ずっと電話をかけている。彼は、高校時代野球に打ち込んだ仲間たちとの、「10年後もう一度野球をしよう」という約束を果たすため奔走していた。 ●風に舞いあがるビニールシート UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に勤めるエドと里佳。自らの命を危険に晒してでも、フィールド(現場。発展途上国など、難民のいる地域)に居続けたいエドと、単に勤務条件や男女の評価差のなさ、環境で仕事を選んだ里佳との間のすれ違いを描く。ある部分で共通点があり、愛し合っていた2人だからこその苦悩。
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いままで読んできた本とは違う、特別な魅力を持った素敵な1冊。
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