武士道エイティーン

文春文庫

誉田 哲也

2012年2月10日

文藝春秋

814円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

宮本武蔵を心の師と仰ぐ香織と、日舞から剣道に転進した早苗。早苗が福岡に転校して離れた後も、良きライバルであり続けた二人。三年生になり、卒業後の進路が気になりだすが…。最後のインターハイで、決戦での対戦を目指す二人のゆくえ。剣道少女たちの青春エンターテインメント、堂々のクライマックス。

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書店員レビュー(1)
書店員レビュー一覧

長江貴士

書店員

誉田哲也「武士道エイティーン」

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2019年12月24日

みんなのレビュー (2)

Readeeユーザー

ツキ

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4.6 2021年12月10日

【守破離(シュハリ)】 わたしたちは、もう迷わない。 この道をゆくと、決めたのだから。 急な上り坂も、下り道もあるだろう。 枝分かれも、曲がり角もあるだろう。 でも、そんなときは思い出そう。 あの人も、きっと同じように、険しい道を歩み続けているのだと。 武道とスポーツの違い。 暴力や殺し合いと、武士道の関係。 剣道は、スポーツなのか、武道なのか。 オリンピックの柔道との比較でよく語られるテーマだ。 試合をする剣道はスポーツである。 剣術は、相手を傷つけない竹刀と、自らがケガをしない防具を採用した時点で、真剣勝負を想定した武術から、打ち合いそのものを楽しむ「剣道問う名のスポーツ」になったのである。 現代の剣道はそれでいい。 人が人を斬る必要はない。 よって、斬る技も不要である。 人を斬ることができる技。 それを求めることは、げに恐ろしい事である。 シカケとは、つまり仕掛ける暴力。 オサメとは、その暴力を収める事。 実践的剣道を知るものは少ない。 あたしたちにとっての、剣道。 一撃で相手の戦闘能力を奪う。 相手を殺すのでも、傷つけるのでもなく、 また自分も無傷のまま、戦いを終結させるという、理想。 そういう戦い方を習得するのが武道だ。 試合は実践ではない。あくまでも稽古だ。 相手も自分も一撃で暴力を無効にする。 そういう一本を学ぶため、開始戦に立つ。 竹刀を振るう。 いわば、誰もが同志。 決して敵などではない。 無駄打ちは相手を傷つける。 こっちも傷つく可能性がある。 だから、、、打たずして攻める。 攻める「気」によって相手を充分に崩し、 間違いない機会を捉えて、そこに渾身の一撃を叩き込む。 冴えのある一撃が唯一無二の目的。 だから、それ以下のものは数えない。 外れた打突はなかったことにして、次の一撃を試みる。 双方が無傷であるという仮定に立ち返って、再び学びのために竹刀を交える。 カテェェイヤ、メェェェン、ドゥワァリアー、ツケェエエエイヤ 高校の三年間にしてやっとたどり着いた。 がむしゃらに相手を斬ることばかりを考えていた一年。 勝つということ、何もかもがわからなくなった二年。 そして、 戦いを収めるのが、誰も傷つかないようにするのが武道。 そういう技を学ぶのが武道。そして剣道だ。 それがやっとわかった三年。 高校のその先。 あたしはその先もずっと竹刀を振るっているだろう。 おまえは、どこへ向かうのか。 おまえがどこへ向かおうと、あたしは戦いながら待っている。 ここに戻ってくるのを待っている。 あたしが待っているのは自由だろ。 そう思ってあたしが戦うのは別にいいだろ。 あたしは一人でも、お前と一緒に、戦い続ける。

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Readeeユーザー

(無題)

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2.6 2018年01月24日

岡巧、剣道インターハイの覇者にして早苗の姉緑子の彼氏である。緑子は高校生でありながら、ティーン雑誌の専属モデルをしている。香織にいわせれば派手でチャラ女である。早苗にとっては辛辣で皮肉屋であるが、いざという時には頼りになる存在である。前巻までに巧が緑子と別れて、女子剣道部部長の河合と付き合っているとの噂が流れていた。本巻では、その経緯が詳しく語られている。緑子がプロのモデルとして成長していく厳しい模様が綴られる。語るも涙聴くも涙の感動ストーリーである。 次に語られるのは、香織の師・桐谷幻明の境遇である。桐谷道場の剣は異色である。そこで修業したことが香織の強さの源ともなっているのだが。剣術・体術一体となった桐谷剣道の秘密も明かされる。もう一つ、蒲生武具店のたつじいと幻明との関係も。さらには福岡南の吉野先生の過去も語られる。なにしろこの先生、高校時代には名を知られた剣士であったが、30人もの暴走族をたった1人でたたき伏せたとの武勇伝の持ち主である。吉野先生によれば、30人ではなく13人であったらしいが、その暴力事件にいたる詳しい経緯が、また涙無くしては聞けないお話である。この事件のあと、吉野先生は自分を恥じるとともに自分を責め、引きこもったのだった。そんな時に偶然、桐谷幻明と立ちあう機会が訪れた。そこで吉野は、剣道は人を切ったり殺したりする術ではなく、暴力を収める技であることを身をもって教えられるのだった。最後は田原美緒の物語だ。美緒が香織から禁じられたにもかかわらず、なぜ平正眼の構えをとったのか、香織と仲違えした秘密が明らかになる。 さて、話を物語の本筋である磯山香織と甲本早苗に戻すとは、彼女らは本巻で3年生に進級し高校生活のクライマックスを迎えようとしていた。香織は押しも押されぬ高校剣道界の実力者になっていた。一方の早苗は、人材層の厚い強豪校にあって個人戦には出してもらえないものの、団体戦では主力メンバーとして頑張っていた。インターハイで決着をつけようと香織と早苗が誓い合った夏がすぐそこまで来ていた。そんな中、早苗は右膝を故障してしまう。出場辞退もちらつく中、香織との対決の約束を知っていた顧問の吉野先生が強行出場を指示。そして、運命のインターハイ団体戦で、二人は母校の大将同士として対戦する。一方、香織にはもうひとり倒さなければならない相手がいた。早苗の同級生にして永遠のライバル・黒岩伶奈である。彼女も打倒香織を掲げて一年間腕を磨いていたのだった。

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