私の男

文春文庫

桜庭 一樹

2010年4月30日

文藝春秋

836円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。

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書店員レビュー(1)
書店員レビュー一覧

長江貴士

書店員

桜庭一樹「私の男」

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0
2019年12月15日

みんなのレビュー (5)

HONAMI

父と娘の生々しい愛と性の闇に触れる

starstarstarstar 4.0 2022年09月25日

養父と養女のタブー、いや、本当はもっと深くて近かった。結局誰が花の母親なのかはわからない。いつどうやって生まれたのか、なんで仮の家族の元にいたのか、いろいろ大事な不明点があるのに、物語はそんなもん一切無視。読者はどっかに答えがあるのかと期待しちゃう。でも最後まで読んだってわからない。そしてそれは2人にとってどうでもいいことだから。事実がどうだろうが2人が愛し合って、深く依存し、絡み合い、離れられない。2人が満たされていれば、他はどうでもいい。そういう話。生々しくどんよりと、それでいて鋭い文体が後を引く感じ。

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Readeeユーザー

冒してはならない愛の領域の美しさに踏み込む

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4.3 2022年07月20日

→あらすじ:主人公は腐野花。着慣れない安いスーツを身に纏ってもどこか優雅で惨めで、落ちぶれた貴族のような"私の男"の名は淳悟。養父に当たる。突然、孤児となった十歳の花を、二十五歳の淳悟が引き取り、海のみえる小さな街で私たちは親子となった。物語は、アルバムを逆からめくるように、花の結婚から二人の過去へと遡ってゆく。空虚を抱え、愛に飢えた親子が冒した禁忌、許されない愛と性の日々…。 →花ちゃんと養父の近親相姦のお話。お互いがお互いを必要とし過ぎてしまって、近づき過ぎてしまう、愛しすぎてしまう、他者からしたら絶対に許されない愛の形。そんなことが許されない、間違ってるってことは、主人公たちこそが認識している、しているのに(しているからこそ)、お互いをさらに求めてしまう二人の愛の形、桜庭先生の文体、に踏み込んではいけない美しさを感じてしまった。 →この作品を、ドラマやアニメや漫画などにしたら、「うわあ」とか、性的虐待だ、って胸くそ悪く感じそうなところでさえ、その冒してはならない愛の美しさを感じてしまった。

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かかりちょー

圧倒的な深さ

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4.5 2022年02月13日

読む人によっては嫌悪感があるかもしれない。その先にある深さ、閉鎖空間、なのに広く。 圧倒的な世界観にひきこまれました。様々な角度の意見があるなかで主役の視点が研ぎ澄まされていく感覚になります。 読み終わったとき、まっさらな紙に一滴の墨を落としたようなこの胸に残るものに打ちのめされました。

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Readeeユーザー

下衆かった

starstarstar 3.0 2019年06月10日

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Readeeユーザー

(無題)

star 1.0 2017年06月08日

まったく好きになれなかった。小児性愛、近親相姦、マザーコンプレックスと、世間から非難されやすいテーマを、これでもかと描写していた。 ここまで臆面もなく、生々しい描写を続けるということは、意図的に読者に嫌悪感を抱かせるつもりだったのだろう。 林真理子の書評の通りだ。 この目論見は僕にも、「ストレートに効きすぎた」。 読み進めるごとに嫌悪感は増幅していき、これを文学性とは感じることができなかった。 頭が固いのかもしれないが。 物語は主人公花の結婚前日から始まる。「私の男」は養父淳悟だ。彼女たちの秘密の関係が、どのようにして生まれたのか。 花の夫や淳悟、淳悟の元恋人などの視点を交えて時間を遡る形で話が進んでいく。 ただ、遡ったままで時間軸は元に戻らないため、失踪した淳悟のその後などは不明のままでであり読者としては消化不良を感じた。これも確信犯なのだろうけど。 いずれにせよ、テーマ、文章、構成のどれをとっても好きにはなれなかった。 書評 逆行する構成 賛否両論 文体のの怪しさや雰囲気 高評価 書き出しの仕掛けの巧みさ 高評価 表現力や描写が稚拙 低評価 現実性 低評価 井上ひさし 試みは巨きく、そしてその試みはほとんど成功している。」「章が変わるにつれて時間が逆行して行き、そのつど読者はそのときどきの真相を知って絶句することになる。」「これを起きた順に書けば、あいだに二つの殺人もあるし、どろどろの近親相姦モノに成り果てて読むに耐えなかっただろうが、作者は(たぶん)ギリシャ悲劇の「オイデプス王」の構造をかりて時間を遡行させてどろどろ劇をりっぱな悲劇に蘇生させた。」 林真理子 私はこの作品をどうしても好きになれなかった。」「作者がおそらく意図的に読者に与えようとしている嫌悪感が私の場合ストレートに効いたということであろう。」「主人公の女性にも父親にもまるで心を寄せることが出来ない。」「私には“わたし”と“私の男”が、禁断の快楽をわかち合う神話のような二人、とはどうしても思えず、ただの薄汚ない結婚詐欺の父娘にしか思えない。」

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