
レイジ
文春文庫
誉田 哲也
2014年3月7日
文藝春秋
660円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
剣道女子2人から、今度は音楽男子2人の青春小説だ! 孤高の礼二と世渡り上手なワタル。2人が初めて組んだバンドは成功を収めるが、それ以降互いに意識しつつも歩み寄れず、やがて……。
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誉田哲也を読み始めるのに本書を選択したのが正解であったかどうかは分からない。というのは、誉田哲也と言えば警察ものに定評があるにもかかわらず、本書は音楽ものであるからだ。しかも、ロックときては僕には全くのお手上げである。 主人公は春日航(ワタル)と三田村礼二(レイジ)の二人。中学の同級生である二人の15歳から35歳までが描かれる。中学三年の文化祭でバンドを組んだ2人だったが、音楽性の違いからレイジが離脱した。その後、高校・大学と進む中で、お互いを強烈に意識しながらも、自分自身の世界も持ち始める二人だった。ワタルはヘビメタ系バンド・インディーズのベーシストとして注目を浴びるが、バンドは内紛により解散してしまう。このあと、ワタルは音楽に関わりながらも演奏家としては終わってしまう。一方のレイジは、自作自演の世界に没入していく。しかし、レイジが考える理想のバンドを組むことができずにいた。ようやく見つけたのは、なんと中学時代の同級生だった。そこにワタルはいなかったが、ワタルも外から応援することになる。メジャーデビューも夢ではなくなったとき、事件がおきるのだった。 ストーリーはこんなところだが、誰もが若い時には一度は憧れ、手を出したいと思うバンドを扱った青春小説と言ったところだろうか。軽いノリで人生を方向付けることに全く疑問を感じないワタル、内省的で生きる事自体に捥がいているようなレイジ、対照的性格の人物像のようにみえて、これは青春時代に共通する気分でもある。 もうひとつ、青春時代の夢についても言及しておきたい。若い時分に音楽に心奪われた覚えがある人は、誰しもがプロのミュージシャンを夢見たはずだ。しかし、そのうち99%の人は夢を諦めて音楽を趣味とする。ごく真っ当な常識人である。大学卒業時にその選択をする人が大部分だろう。ところが、たまたまそのタイミングを誤るとその先には社会からのドロップアウトが待ち受けている。この2人もそんな運命を受け入れざるを得ないかと思いきや、最後のドンデン返しで清涼感溢れる読後となった。
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あの頃を思い出す
全てはここから始まる。俺たちはどこへでも行ける。本気でそう思った。 震えるほどの予感が、このときは確かにあったんだ。 自分は全能になったような感覚。幼いとき感じたあの感覚。失敗など恐れず、ただただ高みだけを見つめて突き進む。跳躍。背中に羽が生えたように、どこまでも飛べそうな高揚感。 あの感覚はいつのまにか消えていた。大人になるとともに、どこかに忘れてきてしまった。普通のレールを見つけそれに流されただ毎日を生きる。右ならえ。大人であるために安定を得るために己を殺して生きていく。 けど俺はいつまでも追い続けた。ストイックと言えるほどまでに。スーツよりも楽器のケースを選んだ。月給より創作を選んだ。強調よりは独創を、服従よりは自己満足を。安定よりもむしろ不安の正体を暴き出す道を選んだ。残った己たった一人で。曲を作り続けた。誰に聞かせるでもない唄を。 でも気がついたんだ。 聴き手のいない音楽なんて、存在しないって。一人きりで唄っていたって、心の中では、誰かに向かって唄ってるものだって。 そう気がついたのはもう三十も手前で、そう気がついたのは仲間も離れていったあとで、そう気がついたのは一番嫌いだったやつの言葉からだった。 長かった。孤独だった。 音楽を嫌いになってしまいそうなまでに追い込まれた。でも、自分が閉じていただけだったんだ。頑なになっていた。気がついて緩んで周りが見えて、世間には音楽が溢れていた。昔自分が作った音楽が、自分の知らないところで楽しそうに流れていた。 一番自分が全能だと思っていたとき。どこだって行けると信じていたとき。どんなことも楽しんでいられたとき。その時の唄が流れていたんだ。また唄えるよと。楽しいと思えたなら、仲間に気を許せたら、きっとまた飛べる。きっとどこまでも。
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