侠飯
文春文庫
福澤 徹三
2014年12月4日
文藝春秋
649円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
就職活動に悩む大学生・若水良太は、ヤクザどうしの銃撃戦に巻きこまれ、組長の柳刃竜一が部屋に居座ってしまう。居候の柳刃はお取寄せが趣味でキッチンを占領しては料理を作り、恐怖と美味に混乱する良太。そこに同級生たちも加わって事態は予想外の方向へ!まったく新しい任侠×グルメの異色料理小説。文庫書き下ろし作品。
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就活本
おまえが変わるしかない。おまえがいまを変えるんだ】 就職活動中の良太は、ある日大学近くのアパートに帰ると、家の前でドンパチしているのを見てしまった。ついでに巻き込まれてしまった。ついでに弾に当たりそうになったところをヤクザに助けられ、ついでにしばらく自宅に匿えといわれ、ヤクザの親分とその子分との狭いアパートでの共同生活が始まった。 部屋に入るなり、部屋の隅々まで掃除させられるはめに。なんでこんな目に遭わなきゃいけなんだ。はやくこんな人たちとおさらばしたい。そう思ってたんだ。あの時までは。 人間いつくたばるかわからん。 だから、いいかげんなものは食いたくないんだ。 そういって、毎回凝った料理をつくるヤクザの親分。一緒にご飯を食べながら、会話がないのもなんなので、就活の相談をしてみた。ヤクザにそんな就職というものがわかるものかと思っていたのに、意外にまともな答えが返ってきたんだ。 自分にむいた仕事を見つけたいっていうが。 仕事ってのは、飯を食うためにやるもんだろうが。 なら、自分が仕事にむくようになるのが筋なんじゃないか。 面接は、自分という商品を売り込みに行く場所だ。 買い物のように、会社が商品を値踏みする。 その商品にどんな魅力があるかが問題だ。 その商品の魅力を訴えないで、買ってくれるはずはない。 仕事には、ぜったいにこだわりが必要だ。 面倒なことを避けて通る奴は成長しない。 あえて面倒なことにこだわる姿勢が創意工夫を生み、他者との差をつける。 まっとうに生きたい。安定したい。 そりゃあ、それは結構なことだ。 物事の上っ面だけ見てたら、足元すくわれるぞ。 まっとうに生きたいのなら、表から見えないところにも目を向けろ。 物事にはすべて裏がある。 光を強くすれば影が濃くなるように、 光だけの世界もなければ、闇だけの世界もない。 すべては表裏一体だ。 善人ぶってる奴ほど、質が悪い。 見たくないものから目を背けてると、視野が狭まって単純な発想しかできない。 自分を善人だと思い込むのはそういう人間だ。 自分を善人だと思ってる奴は反省しない。常に自分が正しい。 なにかで成功したときは、自分の才覚のおかげだと思い込む。 反対に失敗したときは、世の中のせいだ。 それじゃ永久に進歩しないし、物事の本質は見えない。 なに?がんばってる? 会社が求めているのは結果だ。 主観やプロセスじゃぁない。 勉強が嫌いなくせに大学生になった。 そしていま、仕事が嫌いなくせに就職しようとしている。 自分の考えがあるつもりで、結局は周りに流されているだけだ。 就活は今はたいへん? 状況のせいにするな。 おまえが変わるしかない。おまえがいまを変えるんだ。 本気で就活をしていなかった。 だから会社もそれが見えて不採用にしていた。 どこか引っかかるはずだと高をくくっていた。 そんなに甘いもんじゃない。 自分がやりたいこともわからずに、自分が何のために働くかもわからずに、就職活動する。それで内定をとれるわけがなかったんだ。他人と差をつける。自分を売り込む。ここで働く価値のある人間だと。どうしても必要な人間だと。 それがわかったとき、二人は僕の前から消えていた。 新しいスーツがクローゼットにかかっていた。 サイズは仕立てたかのようにぴったりだった。
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toruo
(無題)
冴えない就活の大学生のワンルームに銃撃戦から逃げてきたヤクザの親分が居座ってしまう。 この親分、料理が趣味で主人公に飯をふるまってくれるのだが、この飯を通じた交流で主人公の意識が変わっていき…という話。 結末は気に入らないけどかなり面白かったのと、親分の料理の解説がためになるし美味そう。 ちょっと立ち読みして絶対に面白いと思ったのだけどあたりでした。
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