姉と弟 新・酔いどれ小籐次(四)
文春文庫
佐伯 泰英
2016年2月10日
文藝春秋
803円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
小籐次一家との身延山久遠寺への代参旅から戻ったお夕は、父のもとで錺職修業を始めた。だが父を師匠とする関係に、お夕は思い悩む。一方、駿太郎は実父・須藤平八郎の埋葬場所が判明し、小籐次から墓を建てるよう提案される。姉と弟のような二人を小籐次は見守るが、当の本人もまた騒ぎに巻き込まれ…。シリーズ第4弾!
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(無題)
腕はたつが一向に風采が上がらない爺侍・小藤次と絶世の佳人・おりょうとの対比がユーモラスな酔いどれ小藤次も、新シリーズになって暮らしぶりがすっかりと落ち着いた感じがする。 ところが今巻「姉と弟」に限っては、小籐次に斃された実の父の墓づくりをする駿太郎と、父のもとで職人修業を始めたお夕が主人公のようである。小籐次は静かに二人の成長を見守る。お夕は小籐次の仕事の間に駿太郎の面倒をみたりしていた兄弟のような間柄だ。小籐次が実の父親でないことを伝えられて、駿太郎が己を失いかけたとき、助けたのがお夕であった。そして、今度は駿太郎が飾り職人の父親に弟子入りして悩んでいるお夕を助けようとする。 駿太郎は小籐次が実の父親ではなく、剣術家同士の正々堂々の対決により小籐次に倒されたという事実を知った。実父が養父に斬られたという状況を受け入れたうえで、小籐次を父、おりょうを母としている。この巻では須藤平八郎の墓がどこにあるのかを調べ、改めて墓を建てることを決め、駿太郎は石屋で修業をして墓に赤目駿太郎の名を刻むことを決めるのだった。 これは本巻のメインストーリーであるが、その他にも小籐次が北町・南町奉行と会ったり、旧藩の藩士が剣術修業に入門してきたりと、物語が膨らむ伏線が張られる。今後このシリーズがどのような展開を見せるのか、期待が膨らむところだ。
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