玉藻前
日本霊異物語
Tokuma novels
千秋寺亰介
2002年10月31日
徳間書店
880円(税込)
小説・エッセイ / 新書
阿波山中、松明を持って歩む一組の男女。怨霊師の真名瀬舞と陰陽師の安倍北麿だった。時はすでに亥の刻、この日、六匹の怨霊を葬り去った帰りだった。だが、不吉な感覚が北麿の担いできた笈から漂ってくる。舞は小剣を構えて、真上から笈を貫いた。世にも恐ろしい叫び声が起こり、笈の蓋が開くと小さな布袋の置物が蠢いている。この布袋の置物は、六匹の怨霊が十五家族を貪り食った時、殺戮現場に転がっていたものだった。布袋の像に憑依した怨霊は千年の長きにわたり、何処へ消えていたか分からなかった怨霊で、玉藻前といった。この怨霊は平安京の陰陽頭として鳥羽法皇に仕えた安倍泰成に正体を見破られ那須野に逃げ、石となったという。“殺生石”となった怨霊は、周囲を呪縛したが、玄翁和尚により石が砕かれ散滅されたと言われていた。それが、忌部の里を襲った。
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