真珠湾、遙かなり(後篇)

零戦隊血風録

Tokuma novels

鳴海章

2003年1月31日

徳間書店

900円(税込)

小説・エッセイ / 新書

ト・ツ・レ“突撃隊形制レ”…。土手っ腹だ、土手っ腹をねらえ!照星、照門が重なり敵艦・ウエストバージニアの中央-ちょうど煙突と煙突の間にぴたりとのった。「射っ」八百三十キロの魚雷を投下した九七式艦上攻撃機は、近藤の意志とはかかわりなく、ふわりと浮かびあがった。「魚雷は?」「走ってます!」鈴原は白い航跡を曳きながら敵艦に向かって真っ直ぐ走る魚雷の姿を捉えた。「右舷甲板に対空砲。鈴原、撃て!」九七艦攻の旋回機銃とウエストバージニアの対空機関砲が真っ向からむきあった。鼻先を薄緑色の曳光弾が唸りをあげる。衝撃波が顔を打つ。鈴原はのけぞり、そのまま側壁にたたきつけられた-。迫真、長く短い真珠湾攻撃の一日。

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