神去なあなあ日常
三浦しをん
2009年5月31日
徳間書店
1,650円(税込)
小説・エッセイ
美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ〜!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。
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全くの偶然だが、自然や過疎地における濃厚な人間関係によって蘇生する人間の物語を続けて読む事になった。共に幸せ感を味合わせてくれる小説である。方や南の島、こちらは山また山の神去村。サスペンス要素も大どんでん返しのからくりも無い。ただ真剣に林業に携わる人達の日常を書いているだけなのにこんなにも素敵で時々ぷっと笑える物語が紡ぎ出されている。 都会で高校を卒業したものの大学には行かず、かといって就職先も探そうとせず、そのままフリーターになるんだろうなと思っていた平野勇気。ところが、そのまま家に居着かれてはたまらないと考えた親のだまし討ちにも似た仕打ちによって、三重県の山奥にある神去村へと放り込まれて、林業家の下で働く羽目となる。 村には政府から、育成のために助成金が300万円ばかり支払われ、断ろうにも良心がとがめる。また、都会の喧噪とは正反対で、一切の娯楽のない村の暮らしに飽き飽きし、逃げ出そうと画策したものの、駅へと向かう足がなく、列車に乗る金もないから逃げ出せない。何より居候している家のヨキこと飯田与喜という男が、金髪で筋骨隆々とした体力バカ。逃げても追い付かれて連れ戻される。会った早々に携帯電話の電池を抜かれ、友人たちにも連絡がとれない。勇気はいやいやながらも林業の仕事を始め、そして知らずだんだんとその仕事に打ち込んでいくようになる。 濃密過ぎるが故に、時には鬱陶しく感じることもある田舎のコミュニケーション。けれども、それに慣れてしまうと、そこから離れてしまうのが何だかとっても寂しくなる。また、一所懸命に仕事をして、すっかり地域にとけ込んだようでも、村で最大の神事が行われる際には、余所者だからと排除されようとしたときの寂寥感。幸いにして勇気の場合、発生した山火事への献身的な取り組みが、認められ地域社会の一員となっていく。 自然を相手にすることは、人知を超えた、コントロールのきかないものを相手にすることでもある。ときにはいかなる努力も無駄に終わってしまう。彼らは、それを当然のこととして受け入れていくのだ。その懐の深さを表す言葉が「なあなあ」というわけだ。そうして緩やかに物語は進むのかと思うと、クライマックスは怒濤の迫力を持った祭りのシーンへ。村で48年に一度という大祭が催されるのだ。 林業に励まざるを得なくなった少年の、日々に苦労しながらもだんだんと仕事の面白さを覚え、コミュニティに溶け込んでいく心地良さを感じていく心境の変化が見事に描きこまれている。
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金鯱
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