潜謀の影

お髷番承り候1

徳間文庫

上田秀人

2010年10月31日

徳間書店

691円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

将軍の身体に刃物を当てることが唯一許されるだけに、かえって絆が深くなるお髷番。四代家綱は、秘命を託すのに最適なこの役に、かつてお花畑番として寵愛した深室賢治郎を抜擢した。謹慎が解け、帰藩する紀州大納言徳川頼宣の「我らも源氏でございます」という言葉の真意を探らんがためだった。務めを遂げんとする賢治郎の前に、将軍位奪略を巡る徳川家重鎮らの姦計が立ちはだかる。

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2018年01月21日

今まで読んだことのない作家の作品に触れるのは、実にスリリングですね。アタリかハズレか、自分の時間をその作品に費やしたのが得であったか、あるいは損したと感じるのか読み終わるまで判断がつきかねるのは、一種のギャンブルに近いものがあります。過去に読んだことがある作家であれば、大体検討がつきますし、好きな作家であればハズレても諦めがつきますものね。 それでは、本シリーズはどうなのか、気になるところですね。結果はアタリ、それも大アタリです。面白いです。どこが面白いのか、それは歴史上の史実がふんだんに盛り込まれいるところから、虚実入り混じった内容になっているところです。つまり、ウソが上手なんですね。いかにも本当らしいウソがいっぱいなんです。これが時代小説の王道であり、読者にしてみれば醍醐味となります。 ところで、時代小説と歴史小説の違いって考えたことがありますか。簡単に言えば歴史小説に登場する人物は、実在した人物であるのに対して時代小説の主人公は想像上の人物であることを挙げられます。その意味では本書の主人公・深室賢治郎は架空の人物ですので、時代小説に分類されるのでしょうが、脇を固めるのが歴史上の人物で、その存在感が圧倒的なんですね。例えば本編で語られるミステリーの謎解きをするのは、主人公の深室賢治郎ではなくて松平信綱なんです。松平伊豆守信綱と言えば知恵伊豆(知恵出ず)で有名な人物ですね。正に適役と言えましょう。 また、本編のストーリー展開上、骨格をなす前提で重要な人物が春日局の役回りです。春日局と言えば三代将軍家光の乳母として知られていますが、それ以上に江戸城大奥の礎を築き、老中以上の権勢を振るった女傑でした。一介の乳母がそこまで登りつめるのは、普通に考えれば不可能です。このため春日局には様々な異説が存在します。作者はそれらを踏まえた上で、作者なりの大胆な説を本書で展開しています。 さらに、家康の10男・徳川頼宣の役どころも重要です。何しろ本編で設定された謎の言葉「同じ源氏なのだから」の言をはいた人物なのですから。頼宣と言えばその才能を家康に愛された事で知られますが、本書でもその傑物ぶりが見事に描かれています。 このように歴史上の人物が史実を踏まえて活き活きと描かれるには、歴史に対する深い見識と卓越した歴史観があって初めてできる事です。それが本書を単なる時代小説以上に深みを与えるいる原因だと思われます。

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