所轄魂
徳間文庫
笹本稜平
2014年6月30日
徳間書店
814円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
女性の絞殺死体が公園で発見された。特別捜査本部が設置され、所轄の城東署・強行犯係長の葛木邦彦の上役にあたる管理官として着任したのは、なんと息子でキャリア警官の俊史だった。本庁捜査一課から出張ってきたベテランの山岡は、葛木父子をあからさまに見下し、捜査陣は本庁組と所轄組の二つに割れる。そんな中、第二の絞殺死体が発見された。今度も被害者は若い女性だった。
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(無題)
題名からは所轄vs本庁、横暴な本庁に所轄が一矢報いる内容が予想される。警察小説としてありがちな内容だが、そんなステレオタイプの小説とは一味もふた味も違う作品だ。所轄と本庁の対立となると、本庁側が悪役となるのが普通だが、読者の期待通り警視庁一の鼻つまみ者が登場する。公権力を自らの力と勘違いして強行捜査一辺倒の捜査一課13係長の山岡である。 また、本庁で悪役と言えば情よりも理屈が先立つ冷徹なキャリアを思い浮かべることだろう。ところが、本書に登場するキャリアは、読者の予想を裏切る。叩き上げの刑事の背中を見て育ち、そんな父親を尊敬する刑事魂が染み付いた男だからだ。 葛木邦彦警部補はかつて警視庁捜査一課の刑事だったが、2年前に妻を亡くしたことがきっかけで異動願を提出し、現在は城東署組織犯罪対策課の係長を務めている。息子で26歳の俊史は、国家公務員試験一種に合格した後警察庁に入り、現在は警視庁捜査一課のキャリア監察官である。 城東署管内で殺人事件が発生。城東署に捜査本部が置かれ、警視庁からは捜査十三係が派遣されてきた。係長の山岡宗男は帳場壊しとして知られている。そして監察官として、現場が初めてである俊史が着任した。 捜査方針を巡って穏健派の葛木親子と、強硬派の山岡が対立。しかも続けて被害者が出る連続殺人事件となり、ぶつかり合いは激しくなるばかり。果たして、事件は無事に解決できるのか。
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