真田合戦記（昌幸の初陣）

真田合戦記の5作目。 物語の時代は、東国での小領主の争いから、強大な力を持った大名同士の争いへ、移ってゆく。海野宗家のもと、まとまってい滋野一族やその血族は、その中心を失ってから、各家バラバラにその家名を紡いでいた。 そして彼らが散らばっていたのは、信濃北部と上野。北条・上杉、そして武田の3大大名家がその覇権を争う地だ。 北条に攻められ越後を頼った山内上杉は、越後上杉の力を借り、ついに関東進出を果たし、向かうところ敵なしの快進撃を見せる。 上野と信濃をつなぐ街道抑え、その通商によむて成り立つ武田家臣の真田は、非常に苦しくなってゆく。 そんな中、幸綱は言う滋野一族の果たすべき使命とは…「真田も含めた滋野の一族が、律令の昔のように、街道を領して安寧な暮らしをおくることじゃ。街道を行き来する商人たちが、平穏無事に稼業に励むことのできる世を取り戻すことじゃ。89」 その他にも、時代が徐々に変わっていることが如実に表現されている点として、父幸綱と子信綱の戦に対する構えの違いが表現される。 また、よく川中島の戦いで解釈される啄木鳥の戦法ではなく、飯山における兵糧の奪い合い合戦であったとする解釈も中々。 特に、戦略盤を関東にまで広げ、真田の抑える峠をある意味争点とした戦いであるという軍略ベースでの大きな軍盤、一方、小さな戦術ベースでは上杉軍は餓えていて、飢餓による焦りをもって武田軍で攻め寄せたという説。などなど。 昌幸の初陣というタイトルで、たしかに昌幸の初陣に隠された信玄・勘助、幸綱らの思惑や、これからの昌幸の人生に大きな影響を与えるであろうという観点でも興味深い。

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