捨て童子松平忠輝(上)

秋田文庫

横山光輝 / 隆慶一郎

2010年1月31日

秋田書店

859円(税込)

漫画(コミック) / 文庫

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3.9 2018年01月27日

著者の隆慶一郎は徳川家康の実子松平忠輝を「捨て童子」と書名で明らかに言っている。ここでは何よりも童子と言う言葉と家康に捨てられたと言うことに注目しなければならない。『捨てられた』のであって『棄てられた』のでは無い。また、童子には単なる子ども以上の意味合いが含まれることに留意しなければならない。酒呑童子の名は、もともと「捨て童子」が訛ったものと言われるように、中世の我が国には常人の能力をはるかに凌駕する童子が存在したし、人々からある種畏敬の念を持って接しられた。 松平忠輝・幼名辰千代は家康の第6子として生まれた。母親はお茶阿の局。お茶阿は武家の娘ではなく、家康に出会ったとき、子持ちの人妻であった。お茶阿の夫は山田何某と言う鋳物師であった。鋳物師は遠い昔我が国に渡ってきた帰化人の末裔であり、本来は一所に定住することなく、全国を旅して歩いた漂泊の民である。彼らはいかなる権威にも隷属しない自由の民であった。お茶阿は絶世の美女であった。このため、代官が横恋慕して、あろうことか夫を無実の罪で捉え、殺してしまった。お茶阿は権力に屈服するような女ではなかった。鷹狩りの折、家康に直訴したのである。家康の風呂番として雇われた彼女に家康の手がつくのに時間はかからなかった。このように数奇な運命を辿った人である。 そんなお茶阿が産んだ辰千代は、容貌魁偉であった。その目はつり上がって、見るからに恐ろしげだったと言う。その容貌に異能異才を見抜いた家康は捨てることを指示した。子供の健やかな成長を願って、捨てる、然るべき人に拾われて育てられる、ということは当時割と頻繁にあったことだった。こうして辰千代は下野・皆川広照の養子として育てられることになった。 辰千代は鬼子の面目躍如の成長ぶりであった。天与の身体能力は人並み外れており、幼児期に人をして刮目させるものがあった。このため、家康の御曹子であったが、毀誉褒貶が付きまとったものだった。貴種にもかかわらず奔放なるが故に、破滅と紙一重で生きる辰千代をこよなく愛する人々と疎ましく思う人々とに二分されたのだった。人並外れた異能異才の悍馬・辰千代を野獣の荒々しさから洗練された剣の道、人の道に導いたのが奥山休賀斎であった。師を得た辰千代は、天性の野生児から麒麟へと脱皮し始めたのだった。時を同じくしてそんな辰千代を密かに注目する人物が現れた。大久保長安である。

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