リッカルド・ムーティ、イタリアの心 ヴェルディを語る

リッカルド ムーティ / 田口 道子

2014年5月22日

音楽之友社

3,850円(税込)

エンタメ・ゲーム / 楽譜

マエストロ自らが研究を重ね、実際に演奏してきたからこそいえるヴェルディの真実、オペラの醍醐味。新しい発見に満ちた名解説!

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3.1 2018年01月26日

オペラ『ラ・トラヴィアータ』(日本では「椿姫」で親しまれているが、本書では『ラ・トラヴィアータ』で統一されているので、ここではそれに倣う)には有名なアリアが沢山あるが、僕が1番好きなのは第2幕でアルフレードの父ジェルモンが ヴィオレッタに息子と別れるように説得する場面だ。 田舎の篤実な、それゆえに頑迷でもある倫理観の持ち主である初老の父親ジェルモンが、娘の結婚のために意を決して、都会の上流社会で高級娼婦として生きてきた女ヴィオレッタを訪ねて、息子と別れるよう言葉を尽くして説得する。娼婦などに引っかかってという息子に対する苦い感情、泣く女にふと情を動かされる優しさ、しかしここで一歩も引いてはならぬという必死さと焦り、そういう微妙な感情の移ろいがバリトンの響きに漂う。 本書でムーティはこの場面をヴェルディの妻マルゲリータの父パレッツィとヴェルディとの関係を表したもので辛辣な表現である、と指摘する。僕はこれまで、そんな事はつゆ知らずにヴィオレッタの聖女のような恋心に感動してきただけだった。 イタリアオペラと言えば、軽薄でうわべの美しいを追ったもの、と思われがちであるが、我らがマエストロはそんな思い込みにもメスを入れる。ヴェルディが生涯で最も愛した作品は、と聞かれて「私の生涯はせむし男とある」と答えたことが紹介されているが、リゴレットと言えば1番有名なのが「女心の歌」で、ノーテンキで憂いを知らないテノールのイメージから陽気な喜劇を思い浮かべるが、実は自分の不注意から最愛の娘を失う悲劇である。ヴェルディの心はアリアの明るさとは裏腹に人間の心の闇に鋭く迫っていたのだ。 だから、ドイツ人がイタリアオペラをズンチャッチャと評すのは当たらない。ムーティは人類の遺産として将来へのプレゼントはワーグナーではなくヴェルディである、とさえ断言している。 それでは、イタリアの心と形容したヴェルディとは何者か、あるいはイタリア人的気質とは何か、との疑問が湧くのは当然と言えよう。この点に関してムーティは「彼は、あまりにもありのままに私たち人間の情熱や苦悩、長所や欠点を表わすことができる作曲家であるため、作品の中に私たちは自分自身を見つけ出すことになる。これが彼の普遍たるひとつのゆえんである」と述べているにとどまる。

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