来たるべき時代の教育と教育学のために

能力開発から能力制御への重点移動

安彦 忠彦

2022年8月2日

教育出版

2,200円(税込)

人文・思想・社会

現在を「ポストモダン」と捉える場合、その意味は立場や観点によって様々であるが、教育的観点からは「原子爆弾の登場以後」を指すものと考えるべきである。なぜなら、原子爆弾の出現とその放射能汚染によって、人類のみならず地球上の生命すべてが全滅し得る、歴史上初めての事態を招いたからである。これによって人間は自らの能力を、ただ何でも伸ばせばよいのではなく、人類の生存を危機に陥れる可能性のあるものは制御しなければならない、という事態が生じたのである。その結果、教育は単に「能力開発」だけを追求するのではなく、「能力制御」をもあわせて追求しなければならなくなったという事態に、人類史上初めて直面する時代に入ったと言える。このことはその後の地球環境問題によって一層顕著になっており、国連も「持続可能な開発目標SDGs」を掲げざるを得なくなっている。これによって「持続可能な社会」のために「新たな教育と教育学」が求められているが、これまでそれを、私たちの子供たちの未来を保障するために、誰も明確に唱えていない。明らかにこれは、人間の歴史的自己認識の甘さを示していると私は考える。

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