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老人に冷たい国・日本
「貧困と社会的孤立」の現実
光文社新書
河合克義
2015年7月16日
光文社
836円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
“大切なもの”が欠落する日本の社会保障・福祉制度“高齢者3000万人時代”に必要な視点そして問題解決へのシナリオ。
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(無題)
この国が老人に冷たいと感じるか、そうでないかはその人の置かれた境遇によって異なるだろう。何故なら、本書では悲惨な一人暮らし高齢者の実例を取り上げているが、調査によると1人暮らし高齢者の4人に1人が毎日を豊かに過ごしており、そのような人の割合が1番多いからだ。その一方で、生活保護世帯以下の収入しかない単身高齢者は半数を超えており、厳しい実態が数字の上から伺える。本書は高齢者とりわけ一人暮らしの高齢者の貧困と社会的孤立に焦点を当てたルポルタージュである。 著者は「孤立死や餓死はあってはならない」と高々に断ずる。しかし、誤解を恐れずに言うなら、私には孤立死をなぜそこまで嫌うのか理解できない。著者が本書中でステレオタイプ化してみせている貧困故の孤立と孤独死とて、本人が望んだものである可能性もあるのではないだろうか。ましてや、経済的に豊かであっても、孤独死を望む人だっているはずだ。 著者はまず初めに孤独と社会的孤立とを明確に立て分けるべき、と主張する。孤立は「人間関係を喪失した状態」で、孤独は「人間関係の欠損または消去により生じる否定的な意識」といえる。「孤立」状態により生じる寂しさややるせなさといった意識の総体が「孤独」となる。 それでは、高齢者が社会的に孤立するとどのようなデメリットがあるのだろうか。まず第一に考えられるのは『誰とも会話しない』『近所づきあいをしない』『困ったときに頼る人がいない』という社会から孤立した状態が続くと生きがいを喪失したり、生活に不安を感じることが挙げられる。次は振り込め詐欺など高齢者の消費者被害が深刻な問題になっているが、これには高齢者の孤立化が関係している可能性がある事だ。そして、犯罪を繰り返す高齢者に孤立化の傾向が認められることも見過ごせない。前科や前歴がある人ほど単身者が多く親族との接触が少ないことが認められる。つまり孤立化を防ぐことが安心、安全な社会を築く上でも重要であるのだ。 ところで著者は、先進国の中で日本ほど「老人に冷たい国はない」とつくづく思うと述べる。それは自己責任の範疇をはるかに超えているという。例えば、終始自己責任原則を貫くアメリカと比べてどうなのだろうか。僕には残念ながら、その事に対する見識も経験もないので、わからない。しかし、団塊の世代が後期高齢者となれば、1人暮らしは手が届くところまで近づいてくるのが確実だ。その意味では、高齢者のわずか1割しか対象としていない介護保険を離れて、老人福祉に新たな政策展開を求める意味は十分に納得できるところだ。
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